究極のサウナ! ネイティブ・アメリカンの「スウェット・ロッジ」 ~ととのえ親方のサウナ道③

札幌を訪れる経営者や著名人をサウナに案内し、“ととのう”状態に導いてきたことから“ととのえ親方”と呼ばれるようになった松尾大。プロサウナー・ととのえ親方の連載第3回は、自身が若い頃に体験したネイティブ・アメリカン伝統の蒸し風呂“スウェット・ロッジ”について紹介する。


ネイティブ・アメリカンの聖なる儀式

サウナ、水風呂、外気浴のサイクルの中で、恍惚感を覚えながら“無の境地”にも浸れるサウナ。心を整える目的で利用するビジネスマンや経営者も多く、瞑想や座禅に近い感覚で活用している人もいるだろう。実際のところ海外では、宗教的な“浄化”の儀式としてサウナ的な空間が活用されている例もあったそう。

トルコの公衆浴場・ハマム、ロシアの蒸し風呂・バーニャ、フィンランドのサウナ……。僕は海外旅行が大好きで、その旅の中で各国のお風呂・サウナ文化に触れてきました。なかでも強烈に覚えているのが、若い頃にアメリカで体験したスウェット・ロッジです。

スウェット・ロッジとは、ネイティブ・アメリカンが行う「身体と心、魂の治癒と浄化の儀式」。儀式を行う場所は、バッファローの皮を張り巡らせたドーム状のロッジの中です。その真ん中に真っ赤に焼いた石を入れ、水をかけ、室内を蒸し風呂の状態にして汗をかく。そうやって身を清める“発汗の儀式”なんです。

なおスウェット・ロッジは、現地の部族の言葉では「子宮回帰」という意味もあります。儀式を行う小屋の中は真っ暗で、「母の子宮に一度帰って戻ってくる」のだそう。僕はこのスウェット・ロッジに、「ビジョン・クエスト」というネイティブ・アメリカンの儀式の一貫として入りました。

ビジョン・クエストとは、数日間にわたって山にこもり、一人きりで断食・断水の苦行を行うことで、夢から啓示を得る儀式。成人を迎える若者や、村の大事なことを決めるために村長が行う修行のようなものです。僕がこのようなインディアンの文化に興味を持ったのは、大好きなゴローズのインディアンジュエリーがきっかけ。ゴローさん(創業者・デザイナーの高橋吾郎氏)も同様の修行の経験者なんですよ。

僕がビジョン・クエストを行った場所は、ネイティブ・アメリカンが聖地と崇めたアリゾナ州・セドナ。赤い砂岩の岩山に囲まれた幻想的な場所で、5日間の断食・断水を行ったのは、そのなかでも人里離れた山奥。周囲に岩も何もないところに、ぽつんと立った木の下でした。

持っていける荷物はダウンジャケットと寝袋だけ。時計もなければ連絡手段もなく、自分が動いていいのは直径2メートルの結界の中だけです。僕がこの場所にいるのを知っているのは、連れてきてくれた2人のネイティブ・アメリカンのみ。下山の体力・気力のない修行の終盤、もし彼らが事故にでも遭って迎えに来なければ、僕も命を落としてしまいます。セドナの山奥は、昼間は37度、夜は4度ほどと気温差も激しく、サソリやオオカミも現れる。実際に亡くなった方もいるハードな修行なんです。

修行中は何もすることがないので、とにかく寝て起きるだけ。1日、2日という時間の経過は、太陽の動きから知るしかありません。途中から意識も朦朧としてきて、「自転している地球の上にっ自分がのせられている!」という感覚になりましたね。

4日目ごろには、喉の奥の体内の器官までカラカラに乾き、カサブタのようになっているのが自分でも分かりました。身体がジリジリと焼けるような音がして、「自分の身体が自分に食べられている!」という感覚も味わいました。その頃には僕が死ぬのを待っているのか、空高くを鳥が旋回し続けていたのも覚えています。そういった極限状態の中で、自分のビジョンを探すのが、このビジョン・クエストなんです。

何とか5日間を乗り切った頃には、もう身体の中までカラカラ。体重は6キロほど減っていました。そんな状態で、水を1滴も飲まずに入れられるのがスウェット・ロッジです。

焼いた石が入ったロッジの中は熱い状態ですが、もう汗なんて一滴も出ない。それどころか、石に水をかけて蒸気が立ち上がったとき、僕の身体の汗腺がブワッと開き、その蒸気を全身の皮膚が吸い始めた。神経が極限まで研ぎ澄まされた状態だったからこそ、その感覚が分かったんだと思いますし、「サウナってこんなに気持ちいいんだな」ということにも気づかされました。要するに、僕はそのとき「ととのっていた」んでしょうね。

汗を肌から出すのではなく、逆に吸うサウナを経験しているのは、プロサウナーの中でも僕くらいじゃないかと自負しています。

④に続く

Composition=古澤誠一郎



ととのえ親方
ととのえ親方
札幌在住。福祉施設やフィットネスクラブを経営する実業家にしてプロサウナー。サウナにハマったのは20代半ばの頃で、その後は世界各地のサウナも訪問。札幌を訪れる経営者や著名人をサウナに案内し、“ととのう”状態に導いてきたことから“ととのえ親方”と呼ばれるように。2017年にはプロサウナーの専門ブランド「TTNE PRO SAUNNER」を立ち上げ、'19年2月には友人の医師らとサウナの最適な入り方を提唱する「日本サウナ学会」も設立した。
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