ジャガー初の電気自動車「I-PACE」の乗り味とは?【ゲーテ編集長試乗記】

ジャガー初となる電気自動車I-PACEは、今後のクルマ社会は明るいのではないかという期待を抱かせる仕上がりとなっていた。雑誌『ゲーテ』二本柳陵介編集長のインプレッションとともに、新しい時代のジャガーの姿を紹介する。


BEVへの移行はデザインにも影響を与える

ジャガーが初めて手がけたBEV(電気自動車)、それがI-PACEだ。BEVという表記に違和感を感じる方も多いだろう。今後は、燃料電池(Fuel Cell)で発電するFCEVと、バッテリーに蓄電するBEVを差別化するために、この表記が一般的になりそうだ。

九州で開かれた試乗会でI-PACEを見た編集長は、ちょっとした違和感を感じたという。

「ボンネットの短いルックスが、見慣れない感じでした。慣れてくると、新鮮な形だと思うようになりましたけれど」

ジャガーといえば、ボンネットに長い直列6気筒エンジンやV型12気筒エンジンを積む、ロングノーズのスタイルが特徴だった。それが、前後にコンパクトなモーターを配し、床下にバッテリーを搭載することで、“鼻先”が短い姿形になっている。BEVへの移行はドライブフィールだけでなく、デザインにも影響を与えるのだ。

驚くべきレスポンスの鋭さ

まずは高速道路とワインディングロードでジャガーI-PACEをドライブする。編集長は、I-PACEが滑らかに、かつ力強く加速することに感心している。アクセル操作に対するレスポンスの鋭さは、驚きを感じるレベルだったようだ。

ある程度まで回転数を上げないと力を発揮しないエンジンに対し、モーターは電流が流れた瞬間に最大の力を発揮する。だからレスポンスが俊敏なのだ。また、ギアがないことから、加速は変速ショックがないシームレスなもの。低速から力強く、スムーズで、静かなBEVは、エコカーというだけでなく、ラグジュアリーカーとしての素質も備えているのだ。

そして編集長は、「下り坂でブレーキを踏まないで済むのがおもしろいですね」という感想を残した。

下り坂でエンジン車のエンジンブレーキにあたる状態になると、モーターは逆回転して発電機として機能、電気を蓄えるのだ。走っているのにエネルギーが増えるという体験は、エンジン車にはないものだ。

水を得た魚のように駆け抜けたジャガーI-PACE

続いて、コンパクトなサーキットでジャガーI-PACEの動きを確認する。コンパクトといっても最高速度は180km/h程度に達するから、あなどることはできない。また、この日はI-PACEのほかに、ジャガーとランドローバーの高性能モデルと比較することができた。BEVとエンジン車にはどんな違いがあるのだろうか。

ジャガーI-PACEは、水を得た魚のようにサーキットを駆け抜けた。前述したようなアクセル操作に対するレスポンスの良さは、こういった場面で真価を発揮するのだ。

タイトなコーナーを脱出してアクセルペダルを踏み込むと、「キーン」という微かなモーター音とともに鋭く加速、あっという間に高速の領域に突入する。
床下に重量物のバッテリーを積むレイアウトも、重心が低くなることからコーナーでの安定感につながる。編集長は言う。

「重心が低いことに加えて、前後の重量配分を50:50にしていると聞きました。コーナーでそれなりにスピードを上げても路面に吸い付く感じで、そうした重量配分へのこだわりは、確かに感じることができました。モーターはスポーツカー的な爆発力も秘めているし、電気自動車はエコカーだというイメージが変わりましたね」

ちなみに、ジャガーI-PACEの最高出力は400ps。同じ条件で試乗した最高出力550psのジャガーF-PACE SVRとのラップタイムの差はほとんどなかった。つまり、コーナーでの速さやレスポンスの良さで、パワーの差を相殺しているのだ。

ありきたりの表現だとジャガーI-PACEは実にスポーティなモデルということになるけれど、そのスポーティさはエンジン車とはちょっと違う。レイアウトやモーターの特性によって、新しいスポーティネスを獲得している。

バッテリーとモーターで走るBEVについて、それだったら自動車メーカー以外でも作ることができるという声もあった。けれどもジャガーI-PACEには、ルマン24時間レースで勝ちまくって名声を勝ち得た、ジャガーというブランドの歴史が凝縮されているようにも感じる。

"高級BEVバトル"の行方

試乗を終えた編集長は、次のような言葉でまとめた。

「1000万円クラスの価格でこの性能と乗り心地。まだまだこれからの市場であるとは思いつつも、この価格でこの性能は充分に納得できる仕上がりだと感じました」

今後、プレミアムクラスのBEVが続々と発表される予定だ。その先陣を切ったジャガーI-PACEの完成度の高さにふれたいま、これからの“高級BEVバトル”の行方が楽しみになってくる。

Jaguar I-PACE
デザインと高度なパフォーマンスが評価され、権威ある「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」も受賞。エンジン車からの乗り換えを考慮して、内装とインターフェイスは従来のモデルから大きく変えなかった。¥9,760,000~


問い合わせ
ジャガーコール TEL:0120-050-689


Text=サトータケシ


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