仕事人たちの偏愛カーライフ~ガレージ編Part.1~

 憧れの秘密基地を実現させた男たちのガレージを拝見! さらに、経営者や各界で活躍する著名人に愛してやまないこだわりのカーライフも語ってもらった。

入川スタイル&ホールディングス
代表取締役社長 CEO
入川ひでと

アメリカからウッドガレージのキットを輸入した。壁や天井を有効的に使い、クルマ、フライフィッシング、波乗り、スノーボード、バイク等のアイテムが計算されて収まっている。

遊びのクオリティーを上げる場所

 ウッドガレージのシャッターがスーッと開くと、かわいいオースティン・セヴンのレーサーが現れた。戦前のイギリスの大衆車を草レース用に改造したエンスージアズム(宗教的熱狂)の塊だ。入川ひでとさんはこの750ccの小さなレーサーで、古い英国車のレースに出ている。張り替えたばかりのシートがいい感じに使い込んだように見えるのは、野球のミット用のドロース(固形ワックス)で手入れしているからだ。「僕、野球部だから」と現在形で言う。

 奥には1967年のポルシェ911Sと69年のルノー8ゴルディーニが今にも走り出しそうに収まっている。ポルシェでは一昨年から全日本ラリーに参戦。50年も前のクラシックカーでのエントリーは入川さんが初めてだそうだ。

3年前に引退するも、遊びが新たな仕事に

ステッカー・チューンが大好き。昔の貴重なステッカーを収集し、ゆかりのクルマに貼れば、あの時代の雰囲気が蘇る。

 「体験こそすべて」と入川さんは言う。自分でやるから知識と経験が増える。知識と経験が増えれば、遊びのクオリティーが上がる。フライフィッシング、波乗り、スノーボード、バイク等も趣味にしている。

 3年前、「身体が動くうちに遊ぶ」と引退宣言し、秘密基地をつくった。バイクなど、モノを立体的に収納して限りある空間を生かしている。見せるテクニックでもある。ガレージの空気が濃密になる。庭から湘南の海が見える。波の音がドドーンと聞こえる。

 ところが、今、バリバリ仕事を東京でやっている。遊びも仕事にしてしまったからだ。例えばクラシックカーの競技イベントを主催したりする。

 遊ぶ→仕事する→儲かる→遊ぶ→の好循環が生まれる。入川さんのガレージは"24時間遊びバカ!"の仕事場なのだ。

オースティン・セヴンの運搬用に購入した88年のフォード・グラマンのステップバンも所有。国際宅配便UPSの10万km走ったものを200万円ほどで購入。日本でオシャレに仕立て直した。
1998年のリックマン・トライアンフ。
Hideto Irikawa
1957年生まれ。ダイエーグループの出店企画等を経て独立。事業開発から街づくりまで手がける。TSUTAYAとスターバックスを組み合わせた、「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」や「UT STORE HARAJUKU.」の店舗プロデュース等でも高い評価を得ている。

プラネックスコミュニケーションズ
代表取締役社長
久保田克昭

世界で戦うオトコが手にした空間

 IT機器メーカー、プラネックスコミュニケーションズの社長を務める久保田克昭さん。しかし世界のクラシックカーレース関係者には"カツ・クボタ"の名のほうが有名だ。世界中のサーキットでクラシック・ロータスのF1や日産のル・マン用ヒストリックレーシングカーなどを駆(か)り、表彰台にのぼるレーサーとしての名前である。

 久保田さんのガレージは、「コンクリート打ちっぱなしの寒々しいガレージにはしたくなかった」という言葉のとおり、白い壁にウッドの什器があしらわれた温かみのある空間になっている。また、10台は入るであろう広いガレージにもかかわらず、柱がなく見渡せるのが特徴だ。

有名建築事務所による、柱がない設計

美しく仕上がったホンダS800と。「小さいクルマで走るのも楽しいですよ」

 「生沢さん(日本の自動車レース揺籃(ようらん)期に活躍した伝説的レーシングドライバー生沢徹さん)のガレージが、1960年代に建てられたのにモダンで素敵だったんです。生沢さんにどなたの手による設計なのかうかがったら、坂倉さんだとおっしゃる。ル・コルビュジエに師事して、パリ万博の日本館を設計したあの坂倉準三さんの建築事務所だったんです。それで僕も事務所を紹介していただき、設計してもらいました」

 柱がない設計は特にこだわった部分。これを実現するために、天井中央には太くて頑丈な鉄骨が入っている。

 現在ここには、ロータスF1を含む9台のクラシックカーとともに、久保田さんが各国のレースで勝ち取ったトロフィーや保存管理を託されたレース史の貴重な品々が収められている。

 「このガレージにあるのはお金の価値には代えられないものばかり。それは、挑戦し走ってきたからこそ出会った人たち、得られた経験の数々です。僕にとってはそのひとつひとつが何よりの宝物です」

ガレージ奥で静かに佇む、セナが実際に乗ったロータス97T。
Katsuaki Kubota
1962年生まれ。クラシック・チーム・ロータス・ジャパンの代表でもある。モータースポーツに積極的に挑戦しており、現代のF4からクラシックF1まで乗りこなす。クラシックF1の世界最高峰イベントであるモナコ・グランプリ・ヒストリックの2014年大会で、念願の優勝を飾った。

Text=今尾直樹、岐部四門(MOTIONS) Photograph=山本慶太( Nacása & Partners Inc.)

*本記事の内容は16年4月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)