景色と家具とアートが一体化した端正な海の家

エンジェル投資家の島田 亨氏邸は、温泉街、熱海の少々雑然としたイメージを覆す美しい邸宅が高台に建つ。建築・家具・調度品が完璧に融合してこそ成し得た場だ。

日常の延長にある気軽なセカンドハウス

絶景、である。約50メートルの切り立った高台から、熱海の海を一望できる。道路も電線もなく、視界に入るのは太古から変わらぬ地球の姿のみ。

前楽天代表取締役副社長、現在はU-NEXTのCOOを務める島田 亨氏の家だ。東京都内の家をファーストハウスとするなら、こちらは文字どおりセカンドハウスであるが、いわゆる別荘ではない、と本人は言う。

天井高のあるリビングルーム。ソファに座って窓の外を眺めれば、視線は遮るものなくプールの向こうの海へと注がれる。

「"ワーク・ハード、プレイ・スーパーハード"が私の信条です(笑)。まだまだ一線で仕事をしたいので、オフに別荘へ行ってまとめて休息を取るような発想はありません。普段のライフサイクルの一環として、熱海の家で過ごしています」

毎週、東京と熱海の家を有効に使い分けている。

「最も多いのは、金曜日の夜に熱海へ移動して、日曜夜か月曜朝に東京へ戻るパターンです。そのほか、じっくり話し合う必要のある案件があれば、熱海で打ち合わせをセッティングしたりも。東京でも、事業計画を詰める時などには、都内の自宅に相手を招いたりします。人とどれだけ交われるか。それが私の仕事・プライベートを通したテーマ。人と深く話せる場を設けることは、大事なポイントです」

熱海にはミーティングルームがあるわけではないものの、大海原を見渡せるダイニングテーブルを囲めば、ポジティブに話は進む。その効用を考えれば、新幹線で品川から40分弱の移動時間など気にならない。

「都内から正味1時間で着くなら、仕事でもプライベートでも人を呼びやすいでしょう。熱海に居を構えることにしたのは、この絶妙な距離感ゆえです」

3年かけて探し出した最上級ロケーション

「土地探しに3年かけましたからね。立地は家をつくるに際して、最も妥協してはいけないポイントだと思います」

これぞという土地に出逢い、そこにどんな家を建てるか。島田氏が設計を依頼したのは坂倉建築研究所だった。

リビングダイニング。壁にかかるアートは、海から連想して、南米のアーティストによる作品でまとめてある。4色の鮮やかな絵画は果物ナイフがモチーフ。

絵画のようにフレーミングされた美しい空と海

「友人の軽井沢の別荘を訪れた際に、その建築の美しさに感銘。坂倉先生に海のロケーションでやっていただけたらどうなるだろうという思いがありました。結果、海という借景を見事に取り入れて、居心地のいい空間をつくり上げることができました」

島田氏が熱海で試みたことが、もうひとつある。家具やインテリアを、建築と一体化させていこうというものだ。

「日本ではどうしても、できあがった建築に合わせて家具を用意していくことになりがち。欧米の建築は、設計段階からどんな家具で家を彩るかをきちんと考えていく。その流儀を採用したかったんです」

そこで家具はアルフレックスにすべてのコーディネートを依頼。ソファ、テーブル、ベッドなどの種類や素材感はもちろん、高さにまで配慮しながら設計を進めていった。

リビングをはじめ、あらゆる家具はアルフレックスで統一。住宅全体が建築と家具のコラボレーション空間といえる。

「大きな成果を得たと思います。ソファに身を沈めた時、ちょうど視線の位置にプールと水平線が広がったり、ベッドから起き上がった瞬間に一面の海が視界に入ったりと、心地よさの質が段違いなのは明らかです」

壁を飾るアートからカトラリー、バーベキューの際に使う紙皿にいたるまで、アルフレックスの専門家によりトータルでのコーディネート。細部にまで気配りを行き届かせた結果、非常に完成度の高い住宅が現出した。

プールつきのテラス。東京よりも温暖なので5月を過ぎればもうここで泳ぐこともあるとか。

どんなに忙しい日々を送っていても、熱海に来ればこの完璧な環境のおかげで、スロウな時間を持つことができ、心身のバランスを整えられるという。


Text=山内宏泰 Photograph=藤井浩司(Nacása & Partners)

*本記事の内容は17年7月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)