この先5年で日本のサウナは大きく変わる! ととのえ親方のサウナ道⑥<タナカカツキ対談>

札幌を訪れる経営者や著名人をサウナに案内し、"ととのう"状態に導いてきたことから"ととのえ親方"と呼ばれるようになった松尾大。プロサウナー・ととのえ親方の連載は、今回からサウナブームの生みの親・タナカカツキ氏との特別対談を掲載。その第7回は変革期に入った日本のサウナ界の現状と、未来の可能性について話し合う。

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カツキさんは「サウナ界のイエス・キリスト」

――そもそもお二人がお知り合いになったのってどういう場所だったんですか。

親方 TABI LABOの社内で開催された、フィンランド観光局も関わっているサウナイトというイベントですね。

タナカ もちろん以前からお名前は知っていましたよ。ととのえ親方って、すごく引きのある名前じゃないですか。友達のサウナーが「オレ、このサウナネームをなんで思いつかなかったんだろう。先取られたわ」みたいに悔しがっていました。

親方 そうですか(笑)。僕もカツキさんのことは勝手に存じ上げていて、『サ道』も含めてカツキさんの最近の活動はぜんぶ追っていました。それで実際にお会いできたんですけど、カツキさんのようにサウナの魅力を日本に広めた人達と、僕とか僕と一緒にTTNEをやっている(秋山)大輔は何かグループが違うじゃないですか。僕らはイベントやサウナ施設をプロデュースしたりするのが本業なので。

タナカ サウナ好きの中にも施設紹介がメインの活動の人もいますし、いろんなグループがありますよね。

親方 そうなんですよね。僕からしたらカツキさんはサウナ界のキリストなんです。カツキさんの登場によって日本のサウナの歴史の紀元前/紀元後が分かれたというか、新しい歴史が始まったというか。その歴史の中で、僕らもサウナのイベントや施設のプロデュースに関わるようになったんです。

「サウナとビール」だけでなく「サウナとシャンパン」の施設も作りたい

親方 そうやってサウナ施設を作ることにも関わる中で、僕は日本のサウナを変えたいなと思っていて。これまでは「サウナとビール」というイメージが強かったですけど、この先は「サウナとシャンパン」というイメージの施設もあっていいと思うんですよ。

――実際にホテルや旅館内にある豪華なサウナは増えているそうですね。カツキさんからは親方の活動はどう見えますか?

タナカ ととのえ親方のやってることって、僕がやりたかったことなんですよ。

親方 へえええー! そうなんですか。

タナカ 施設を紹介する人はたくさんいますけど、ととのえ親方のようなことをしている人は少ないですから。私も本当のサウナを知ってほしい・作っていきたいという思いはあって、FSC(フィンランドサウナクラブ)という団体を作ったり、フェス(SAUNA FES JAPAN)を開催したりしてきましたけど、施設を一から作るのは難しいじゃないですか。自分の周りにいる人もそろそろ年だし、どうしようかねぇ……みたいに思っていたとき、現れたのがととのえ親方で。「あ、もうそっちの活動は全部任せよう」という感じになってきていますね。

――施設やイベントのほうは任せるぞ、と。

タナカ そうなんですよ。次のSAUNA FES JAPANはととのえ親方のTTNEにも手伝ってもらいますし。「あー、なんかいい時期に現れてくれたな」と感謝していて、今はおんぶに抱っこの状態です。

親方 「ちょっと動ける後輩が見つかったな」みたいに思ってもらえているなら嬉しいですね。

タナカ その上にあぐらかこうっていう魂胆です(笑)。

フィンランドでも日本でも新たな層が新たなサウナを作る時代に

親方 そのSAUNA FES JAPANもすごい面白いイベントで、日本で本当のフィンランド式サウナを楽しめるし、サウナ好きの面白い人が集まってくるので、つながる速度が早いんですよ。

親方 みんなサウナが好きすぎですからね。サウナ室のストーブとか、スモークサウナの作りとか、ぜんぶ写真に撮っていくヤツもいますから。

タナカ サウナ好きというレベルじゃない、サウナの研究者が来るんですよ。ずっと通気口ばかりチェックしていて、景色をまったく見ない人もいるし、座面の高さを手で測る人もいるし。

親方 「やっぱり450だな……」とか言っているんですよね(笑)。僕も海外のサウナに行くと座面の高さは調べちゃいますけど。サウナの座面の高さは、床からの距離じゃなく天井までの距離が大事で。日本人の平均の座高は90cmで、サウナでは頭の上に20cmくらいの空間しかないのが理想なので、座面から天井まで110cmとか120cmとかがいいんです。海外ではその低さもいい感じなんですけど、日本で測ると「やっぱり座面から天井までの空間がたけえよな」と思いますね。

――そうやってサウナを研究している人の中に、ととのえ親方のように施設を作る側に回る人も出てきているわけですね。

タナカ そうですね。日本のサウナは、そうやって新しい施設が作られていく時期に入ってきたと思いますし、既存の施設もその影響で変化していくと思います。そういう動きは海外でも起こっていますね。フィンランドでも日本と同じように、新しい作り手の層がオシャレなサウナを作っているんです。

親方 ヘルシンキのロウリュ(Löyly)とかUusi Sauna(ウーシ・サウナ)みたいなモダンな施設ですよね。

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タナカ そうそう。だから今、世界中でサウナがカルチャーとして広まりつつあるんですよ。

親方 ですね。日本だと、ホテルの温浴施設の中にあるサウナは、この先5年くらいで一気に変わると思いますよ。僕だけでいま10個くらいプロデュースに関わっていて、地方の温泉リゾートのホテルから、渋谷のホテルまで、いろんな案件があります。その一つ一つで「今まで見たことないものを作ろう」と頑張っているんですけど、ムチャクチャ面白い仕事ですね。

スキーリゾートの施設でもサウナが冬のエンタメの一つに

親方 カプセルホテルと一緒のようなサウナも、今メチャクチャ変わってきているんですよ。名古屋でサウナを展開しているウェルビーの社長の米田さん(米田行孝氏)というすごい人がいて、あの人は日本のサウナを変えていますよね。

名古屋のウェルビー栄」の「アイスサウナ」。

タナカ 「Sauna Lab」という実験的な場所も作って、いろんなことを試していますよね。2階から水を落とすロウリュとか。

親方 あれすごいですよね。

タナカ ロウリュするときは柄杓で水をかけますけど、フィンランドではすごい遠くから水をかけるんですよね。かけると言わず「ロウリュを投げる」っていうくらいで。それに慣れてるから、みんな投げるのが上手いんです。

親方 的に当てるような感覚ですよね。バシャーンって。

タナカ それでブワッと蒸気が上がるんです。日本人はそれができないから、米田さんは2階から落とす方法を試したんですよ。でもやってみると、1階にいる人が怖いとわかって(笑)。「熱いよー!」って。まあサウナラボですから、そういうことがあってもいいんですよ。

親方 実験の場所ですからね。

タナカ あと宿泊施設のサウナの変化は僕も実感していますね。温泉が出ない宿泊施設でも、サウナはいいものを作れるし、それで人も集められるようになりはじめているので、これからいろんな変化が起こっていくと思います。

親方 TRANSIT GENERAL OFFICEの中村さんも、白馬にゴンドラ型のサウナを備えた施設(白馬マウンテンビーチ)を7月にオープンしましたね。中村さんは、札幌に来たときは僕と一緒にサウナでととのっていく仲なんですけど、そういう施設を作る人がどんどん増えてほしいと僕は思っていて。今は僕みたいなサウナ好きが、経営者の方とか、ホテルのオーナーさんにサウナの魅力を広めている感じです。

タナカ リゾート地の施設側としては、冬のエンタメが一つ増えるから大歓迎でしょうね。スキーやスノボがメインの場所でも、サウナがあれば新しいお客さんの層を呼び込めるので。ゲレンデを作るのに比べればサウナを作るのは簡単ですからね。

親方 今は新しいサウナができるとニュースにもなりますからね。いい温泉はリゾート地にはたくさんあるでしょうけど、いいサウナを作れれば、ほかと差別化もできますし。

タナカ サウナ室はオシャレに作ろうとすればオシャレに作れるので、ビジュアル的にも便利なんですよ。オシャレなプール、サウナ室、お風呂あたりが揃えば、温泉が出ない施設でも見栄えがすごくよくなる。最近はフィンランドでもストーブの形が洗練されてきて、オシャレでカッコいいものが増えていますから、日本も変わりはじめると思います。あとテントサウナを運営できるチームが日本にいくつか出てきたので、キャンプ場も最近は変わってきていますね。テントサウナはサッと作ることができるので、フットワーク軽く動けますし、釣りとかキャンプをする人のカルチャーにもサウナは入ってきていると思います。

中でスマホをいじれるサウナやアイスが食べれるサウナがあってもいい

親方 僕がつくったなかでも新しい試みをしているところは多くて、ふたつつくったのは自動で壁に水がかかるサウナですね。

タナカ ウォーリュね。

親方 壁(ウォール)+ロウリュでウォーリュっていうんですけど、お客さんからの反応はメチャクチャいいですね。木の壁に水をかけるとブワッと香りのいい蒸気が立ち上がって最高なんですよ。

タナカ ロウリュができないサウナ室でも、それをすると大分よくなりますね。

親方 ですよね。「サウナストーブに水は掛けないでください」って書いてある施設は多いですけど、「壁に水をかけないでください」と書いてある施設はほとんどないので、僕はそれを何度かこっそりやってたんですけど。それもルール違反かもしれないので、自動でそれをできる施設を作ったんです。

――そうしたサウナ内でのマナーやルール、常識も今後は変わっていくかもしれないですね。

親方 さっきのロウリュの投げ方もそうですよね。フィンランド大使館の女性が下北沢でやったサウナイベントに来てくれたときも、ストーブの近くでジャーって水をかけてたら、「そうじゃない! 貸して」って言われて、バシャって遠くから投げて「これがロウリュウだ」って(笑)。それはすごいカッコいいんですけど、いま日本のサウナでやったら「近くに行ってやれ!」って怒る人もいると思うんですよね。

タナカ 今の状況だといるでしょうね。あと、日本のチョロチョロっとかけるロウリュのほうがメリットがあるかもしれませんからね。横からジャッと勢いよくかけると、エレメントの中央部分に水が入っちゃうので、やっぱりサウナストーブには優しくないですし。上からかければその心配はないし、音もいいんですよね。

親方 ジャー……って感じがいいんですよね。

タナカ そう。でもフィンランドはずーっと冬で、フィンランドメタルの世界ですから、もう「ファイヤー!!!」って感じでロウリュしたいのかも。音も派手に出してテンションを上げたいんじゃないですかね。

――そうやって日本のサウナ界も大きく変わりはじめているわけですが、カツキさんが「それ、ちょっと違うぞ」みたいに感じる動きはありますか?

タナカ 今はいろんなことを実験的に試している段階だと思うので、何が正しくて何が間違っているのかは僕には分からないですね。もしかしたらドライで高温な昔ながらの日本のサウナも、何かいい使いみちが見つかるかもしれませんし。あとサウナ室で雑誌を読んでいる人とか、スマホを見ている人とかもいますけど、それがOKなサウナ室が出てくるかもしれませんから。

親方 確かにそうですね。

タナカ 中で飲食ができるサウナ室があってもいいんですよね。アイスとか食べられたら嬉しいじゃないですか。それがアイスじゃなくタピオカでもいいですし。そうやって試したものの中には、失敗や間違いも出てくると思いますけど、自然淘汰でいいものが残るんじゃないかなと思います。ただ、昔には戻るだけにはなってほしくないですね。

親方 中でヒゲを剃ったりとか、つばを吐いたりとかはイヤですよねぇ。

タナカ マナーは瞬間瞬間の人を思いやる心ですから、人が嫌な気持ちになることはしない、それはサウナ以前の話です。今はサウナ施設はこうあるべきだという観念に縛られず、いろんなサウナが登場してほしいと僕は思っています。

<タナカカツキ対談終了>⑦に続く


ドラマ25「サ道」
放送日:毎週金曜深夜0時52分~1時23分
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ北海道、TVQ九州放送ほか
原作:タナカカツキ『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』(講談社モーニングKC刊)
出演:原田泰造、三宅弘城、磯村勇斗、荒井敦史、小宮有紗、山下真司、荒川良々 / 宅麻伸
監督:長島翔
主題歌:Cornelius 「サウナ好きすぎ」(ワーナーミュージック・ジャパン)
エンディングテーマ:Tempalay「そなちね」(SPACE SHOWER MUSIC)


タナカ カツキ
由緒正しき「日本サウナ・スパ協会」が公式に任命する日本でただ一人の「サウナ大使」というステキな肩書きを持つマンガ家。元々はサウナが苦手だったが、ある日、思いきって入ってみた水風呂でととのってしまい、その日を境にサウナにどハマり。コップのフチ子の生みの親でもあり、それら仕事のアイデアは、ほぼサウナ内で思いついている。『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』(講談社モーニングKC刊)2巻が現在発売したばかり。水草水槽の世界ランカーでもある。
https://www.kaerucafe.com/


Text=古澤誠一郎



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ととのえ親方
ととのえ親方
札幌在住。福祉施設やフィットネスクラブを経営する実業家にしてプロサウナー。サウナにハマったのは20代半ばの頃で、その後は世界各地のサウナも訪問。札幌を訪れる経営者や著名人をサウナに案内し、“ととのう”状態に導いてきたことから“ととのえ親方”と呼ばれるように。2017年にはプロサウナーの専門ブランド「TTNE PRO SAUNNER」を立ち上げ、'19年2月には友人の医師らとサウナの最適な入り方を提唱する「日本サウナ学会」も設立した。
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