【豪邸特集】キッチンを中心にした絶景と共鳴し合う家

脇を流れる小川と、その向こうに横たわる林という「絶景を楽しむ」のが、不動産系企業の役員M氏の邸宅のコンセプトだ。外観は、黒を基調にした壁面の一部を屋久島地杉の格子で覆ったシックな佇まい。この配色と質感は、隣接する豊かな自然に溶けこむと同時に、新緑から紅葉、そして雪に覆われて白く染まる木々の美しさを、さらに際立たせる役割も担う。


素材の質感にこだわった豊かな自然と調和する家

室内も外観と佇まいは同様。壁や階段などは黒をベースにし、床には幅広の無垢ナラ材や白い大理石を用い、リビングダイニングの天井にも岩手県産のナラ材をあしらう。そうしてできあがった無彩色の空間が、窓の外の景色を、より鮮烈に印象づける。

「ここにはもともと義父の家が建っていたんですが、更地にしたら土地のパワーみたいなものをすごく感じました。目の前に小川が流れて、鬱蒼とした木々が望める場所なんて、そうありませんからね。このロケーションを最大限楽しめる家にしよう。そう思ったんです」と、M氏。

M氏の希望を形にしたのは、岩手県盛岡市に本拠地を置く住宅メーカー、D・LIFEだ。黒の使い方と質感の活かし方に定評があり、設計や施工のみならず、インテリアまでトータルでコーディネイトしてくれる。

階段上、吹き抜け天井に下がるザハ・ハディドの照明やダイニングテーブルに配したセブンチェアなども、同社の提案によるもの。M氏が長年焦がれていたポール・ケアホルムの名作椅子PK22との相性もよく、上質感をプラスしている。

トーヨーキッチンスタイルのハイエンドモデル、「イノ・スプラ ッシュ」は「絶景」がテーマ。窓一面の緑に対峙できる存在感を放つ。

「でも実は、2階フロアの核になっているのはキッチン。ショールームで、妻とふたりの娘がひと目惚れしたものです。僕も、ソリッドな感じに惹かれましたね。尖ったものが好きな"角度フェチ"なので(笑)。何より、この眺望に負けない存在感がよかったんです」

その言葉どおり、テクスチャーは、勢いよく流れる滝をイメージしたメタリックで、カラーはいぶしたようなブラック。トーヨーキッチンスタイルのハイエンドモデル、「イノ・スプラッシュ」の製品で、「絶景」をテーマにデザインされているとか。

まさに、この邸宅にふさわしいキッチンといえる。イームズのシェルチェアは座面だけでなく脚も黒にし、IHコンロの前に備えたイスは、メタリックなEMECOのネイビー バースツールにしたのも、このキッチンに合わせてのこと。

家は建物だけでなく、景観や設備、調度品そのすべてを含めて完結する。それを実感できる邸宅だ。

<物件DATA>
所在地:岩手県奥州市水沢
敷地面積::210.91㎡
延床面積:165.96㎡
設計:D・LIFE


Text=村上早苗 Photograph=杉原 修