FM802 ラジオDJマチャオのGWは『イタリア映画祭』推し! ~野村雅夫のラジオな日々 vol.5

大阪のFM802を中心としたラジオDJや、イタリア語の翻訳家などさまざまな顔を持つ野村雅夫さん。この連載では、野村さんがラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードなどを披露。今回は映画解説や、Eテレのイタリア語講座でお馴染みのマチャオ(本人)がイタリア映画祭をご紹介! eccoci qui!!

イタリア語翻訳の裏側をちょこっと紹介します

ゴールデンウィークがやって来る。ご存知だろうか、NHKはこの言葉を使わず、「春の大型連休」と言い換えることを。そもそもGWは、実は1950年代に映画業界が劇場へ観客を呼び込むために考えたキャンペーン。だから、公共放送であるNHKは民間事業の宣伝にならぬように、今も頑なに「春の大型連休」なのだとか。ともあれ、このいわれを考えれば、GWは映画を観に行くためにあると言えなくもない。

そして、海外脱出組を尻目に、非日常の旅気分を味わうにはうってつけなのが、毎年1万人以上を動員し、もう20年近く毎年開催されているイタリア映画祭だ。今年は4月28日から5月5日まで、東京は有楽町にある朝日ホールで、新作14本と、その関連作5本をまとめて観ることができる貴重な機会。イタリアからゲストも多数来日するとあって、会場は連日華やかな雰囲気に包まれる。

ラジオDJであり、イタリアの文化的お宝を日本に紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」を運営している僕にとって、この映画祭での仕事は、分厚い公式パンフレットに1万字を超える長いエッセイを寄せることと、上映作の日本語字幕を制作すること。そう、僕は翻訳家でもあるのだ(そのほかに、5月26〜27日の大阪会場ではステージで見どころを話すことになっている)。

この春、僕たちは同時に3本の字幕仕事を抱え、スタッフが文字通り夜なべしてざっと訳してくれたものを、僕がこれまた夜なべして文字数や表現を調整しながら形にしていく。たとえば、イタリア版アカデミー賞で作品賞などを獲得し、今年秋の日本公開も既に決まっている傑作コメディー『愛と銃弾』。

ナポリの裏社会を舞台に、マフィアや殺し屋が歌って踊るまさかの設定。なおかつ、007や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』といったハリウッド映画へのオマージュも散りばめた娯楽作で、最後まで先の読めない展開もあいまって最高に愉快だ。ただ観ている限りにおいては。

ところが、字幕をつけるとなると、頭を抱えることもしばしばだった。まず、尺が2時間15分ほどで比較的長いし、とにかく喋りまくってるのだ。邦題に「銃弾」が入っているのもさもありなんだと思える程のマシンガントーク。翻訳を担当する僕は、言葉という銃弾を受けて蜂の巣状態。

洋画を見慣れている人でも、この数字を意識することはあまりないだろうが、画面に表示する字幕の数、文字数ではなく、出すパネルの数がどれくらいかご存知だろうか? のべつ幕なしに歌って喋る『愛と銃弾』の場合、その数、実に1800ちょい。つまり、1800回、そこに表示する訳を考えなければいけないわけだ。

たとえば千本ノックという表現は、「それくらい数が多い」という比喩として使われるわけだが、これは言葉の千本ノックだろう。いや、千八百本ノックだ! しかも、空振りは許されない。ノックのように練習ではなくて、試合なのだ。つまり、結果を出さなくちゃいけない。これを3本分。弱音を吐くのは良くないが、映画祭の場合には作業期間と納期がそれぞれ重なってしまうので、1800かける3で5000以上。5000本安打を実現するのは、そうそうたやすいことではない。

「でも、イタリア語できるんですよね?」なんてよく聞かれる。ちなみに、僕は見かけとは裏腹に、ネイティブではない。母がイタリア人ではあるが、日本語で育てられた。僕のイタリア語は、大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)で身につけたものだ。とはいえ、人生毎日これ勉強。間違いがあってはいけないと辞書は常に片手に作業するし、まったく知らない言葉にも未だに出会う。

先日『環状線の猫のように』という作品を訳していて遭遇した未知なる言葉がある。

Ammazzacaffè(「アンマッツァ・カッフェ」――これで一単語。長い!)。直訳すれば、コーヒー殺し。

意味がわからん。実はこれ、食後に飲む強いリキュールのこと。

イタリアでは、前菜、パスタなどの第1の皿(プリモ)、肉や魚などの第2の皿(セコンド)、デザート(ドルチェ)の順番に料理を食べていくが、そのシメとして、夜だろうとお構いなしにエスプレッソを飲む。

でも、そのカフェインが吹き飛ぶくらいに強烈な食後酒もあって、「コーヒー殺し」とはその事らしい。日本で言えば養命酒みたいな、何十種類ものハーブを漬け込んだ食後酒がイタリアにはたくさんあって、僕も大好きなんだが、「コーヒー殺し」なんて言葉があるのは知らなかった。

調べると、その代表格は、サンブーカってやつらしい。この酒は存在こそ知っていたものの、飲んだことはない。これも何かの縁だから、そのうち味わってみたいなと思いながら、ちょうど該当箇所を訳していた日の夜、とある祝い事があって初めて入った京都のイタリア料理店のメニューに発見! 何という、シンクロニシティ!

頼んでみた。無色透明。アルコール度は40度くらい。ニワトコをベースに、リコリス、コリアンダー、アニス、オレンジの花などが加えられる、らしい…。まず、ニワトコがよく分からない。日本でもその辺に生えているらしいけど、馴染みがない。

とにかく、飲んでみた。うま〜〜〜〜〜い!  かぐわしくて、甘いけれど後味スッキリ。癖になる。一気に飲み干してしまった。

その結果、家に帰ってベッドメイクをするなり、そのまま倒れるようにして眠りに落ちる羽目に… 。まだやることがあったので、1時間ほどして必死に身体をベッドから引き剥がしたしたけれど、「コーヒー殺し」の「コーヒー殺し」たるゆえんを身をもって体感した。

世界的に見ても、日本は本国に次いでレベルの高いイタリア料理を食べられると僕は思う。バリエーションも豊富だ。このゴールデンウィークは、銀幕越しに長靴の形をした国へと旅をしつつ、その余勢を駆ってイタリアの多彩な食文化に舌鼓を打つ。これぞ、黄金に等しい流れではなかろうか。

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野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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