都心から1時間以内! あるアートプロデューサーが海を臨む別荘を持った理由とは?

心身を解放するために建てた内房の別荘は、穏やかな東京湾に面し、天井に竹格子をあしらった"海の家"。多忙なE氏はここで休日を過ごすことで、心が穏やかになっていったという。


内房の別荘で脳内スイッチを切り替える

夕刻、三浦半島の向こうに沈む夕陽が、海の上にくっきりとオレンジ色の光の道を描く。まぶしそうに目を細めるE氏夫婦は、テラスに出てワイングラス片手にその光景を眺めるのが至高の時間だと話す。

「夕陽が沈む前後30分間は、ふたりが特に大好きな時間帯。城ヶ島や富士山の輪郭がくっきりして、まるで切り絵のようです」

メディア関係の会社に勤めるE氏が、千葉県の房総半島の内側、東京湾を臨む内房の土地に出合ったのは、45歳の頃。

「もともと海を眺めることや釣りが好きで、30代の頃から海辺に別荘を持ちたいと思っていました。三浦半島や伊豆半島にも下見に行きましたが、内房に決めた理由は波の音の優しさ、対岸に沈む夕陽の美しさ、そして何より静かな環境。また、東京湾アクアラインを使えば都心から片道1時間以内で来られる便利さですね」

E氏は東京湾を横断する海底トンネルを抜けると、頭のなかを仕事モードからプライベートに切り替える。

「パソコンはもちろん、仕事関係のものは持参しません。何か持ちこんでも、必ず持って帰る。この家には意識的に何も置かない様に心がけています」

海水浴場の海の家みたいなライトな家をリクエストし、玄関も塀もない設計に。さらに屋根や柱には竹をふんだんに使い、自然と同化する住まいとなった。

「内房は思っていたよりもずっと温暖。ガラス屋根のこの家では、冬も暖かい日にはTシャツで過ごせます。また、季節によっては双眼鏡でカモメの姿を追いかけ、イワシの群れを探す。イワシの群れが浜に打ちあがった時は、カモメに取られる前にバケツを手に波打ち際までダッシュします。新鮮なイワシのフリットとキンキンに冷えた白ワインの相性は抜群です」

東京では賃貸マンション生活。内房へ行く夜は仕事場から直接向かう。休みの日には海を眺めて過ごし、朝、内房から出勤する。E氏は仕事仲間から、東京と房総を行き来する生活サイクルになってから性格が変わったと言われるという。

「都会での僕は慌ただしい時間に追われる毎日でしたが、ご近所の方々と触れ合ったり、菜園をしたり、パーティーをしたりすると、都会での張り詰めた時間を忘れます。自然に囲まれた生活環境が自分のメンタルにとてもいい影響を与えてくれているので、ここに来て本当によかったと思っています」


Text=神舘和典 Photograph=古谷利幸