人情ラウドロックバンド「オメでたい頭でなにより」 ~野村雅夫のラジオな日々vol.22

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回は、日本一オメでたい人情ロックバンド「オメでたい頭でなにより」のボーカル赤飯さんだ。


バンド名の由来は?

「雅夫さんに、ぜひ聴いていただきたいバンドがいるんです」

声をかけてきたポニーキャニオンのプロモーター。CDと資料を手渡された僕は、声に出して読み上げてみた。

「オメでたい頭でなにより……変わったアルバム・タイトルですね」

「雅夫さん、いや、それがバンド名なんです」

「は?」

聴いてみると、予想通りにふざけていた。しかし、おふざけと一口には片付けられないほど、音楽的なスキルとアイデアが満ちていて、ついつい最後まで聴いてしまう。次はどんな曲かと自然と笑みがこぼれてしまう。そうした合間に、まっとうなメッセージが不意に挟み込まれてハッともさせられる。俄然、興味を持ってきた。会いたい。やって来たのは、赤飯と名乗る、やはり愉快で弁の立つ男だった。いつもの対談よりもテンポの早い軽妙なやり取りをお楽しみいただきたい。

どうも、オメでたい頭でなにより、ボーカルの赤飯です。よろしくお願いします。

ーー赤飯さん、チャオ!

チャオーーーー!(勢いがよすぎて音が割れるほどの声)

ーーフフフ。よろしくお願いします。

はい! バンドですよ、バンド!

ーー初登場です。「オメでたい頭でなにより」ってのがバンド名です。今日は赤飯さんに代表して来ていただきました。この赤飯というのは、まさにオメでたい時にいただいたりする、あの赤飯のことですよね?

おうてます、おうてます。それです。

ーー赤飯さんがボーカルで、他にメンバーが4人、合わせて5名からなる、「日本一オメでたい人情ラウドロックバンド。ライブに足を運んでくれた人たちが、ひとりでも多く、楽しく幸せに騒げる、底抜けに自由でオメでたいバンド」をコンセプトに活動中。

なるほど。

ーー資料からプロフィールを抜粋しましたが、コンセプトがかなり細かく決まってますね。

ハハハ。まあ、漠然とハッピーな感じですわ。

ーーほんまかいな

いやいや、ほんまに、ほんまに。

ーー僕はもう、初めて聴いた時に、耳が離せないってのはこの事だなと思いましたよ。何を次に歌うのか。そのモチーフの決め方とか想像もつかないし、ニヤッとしちゃうんだけど、サウンドはめちゃめちゃかっこいい。みんな芸達者ですよね。

みんなね、楽器がうまいんですわ。僕、ついてるでしょ? 

(ふたりとも)ハハハハハハ!

ーーメンバーはどんな風にして集まったんですか?

もともと僕がソロでやっていた時にサポートしてくれていたメンバーですね。僕がボロ雑巾みたいになっているのを見るに見かねて、手を差し伸べてくれて、「バンドになろうぜ」って言ってくれたんですよ。

ーーへえええ!

いい話なんですわ。

ーーいい仲間ですね。それにしても、何をどうしたら「オメでたい頭でなにより」っていうバンド名で行くぜ、となるのかよくわかりませんよ。スッと決まったんですか?

これはね、ファミレスでの雑談で決まったんです。真面目に話してると、逆に決まらないんですよ。僕が赤飯じゃないですか。オメでたいじゃないですか。

ーーうん。

そういう理由です。

ーーいやいやいや! 

僕がね、バンドを組むなら「オメでたい頭」というフレーズは絶対に使いたいなと思っていて、ほんで……

ーーちょっと待って。聞き流しそうになったけど、幾度となくインタビューをしてきて、そんな人に初めて会いましたよ!

あ、ほんまです? そんで、ファンの人らが、うちらが楽しそうにしてるのを見て、「楽しそうでなによりですね」って言うてくれたのが記憶に残ってたっていうのがあって、合わせて「オメでたい頭でなにより」になりました。

ーー他のメンバーはオメでたい頭なんですか?

みんな真面目ですよ。僕が一番「ファー」なってるんで。

ーー赤飯さんが一番オメでたいんだ?

そうですね。みんながそれをうまいこと支えてくれているような感じですかね。

ーー1月9日にですね、フフフ、「バンド史上初のファースト・フル・アルバム」を……

これもおかしな言い方ですけどね。

ーーそう、ファーストは1回しかないからね。

そう。当たり前やろ、っちゅう話ですわ。

ーーハハハ! オメでたい頭でなにより……

ワン!

ーー早いなぁ。すかさず来るなぁ。1と書くんだけど?

ワンでございます。略して、オメワンです。

ーーオメワンをリリースされました。オメでとうございます! たくさん曲が入ってますね。

そう、全12曲の42分。

ーーフフフ。すごいね。オメでたい頭のわりには、パキッと情報が出てくるね。

でしょ? これはね、ツルッと聴けますから。42分やったら、ツルッと聴けるでしょ?

ーーうん。聴ける聴ける。

通して聴くのってしんどいじゃないですか。

ーーアルバムというものはね。

そうそう。だから、ツルッと聴いてもらわなあかんなと思ったんで、キュッとコンパクトにまとめてみましたよ。

ーーCDの容量としてはまだ入るんだけど、まとまりとしてはこれぐらいがちょうど良かろうと。

最高ですよ。

ーー昨年リリースされたシングル曲や、TVアニメ『火ノ丸相撲』のエンディング曲『日出ズル場所』なんかも収録されていますが、これはいわゆるタイアップってやつじゃないですか。

そうですね。いわゆるアニメ・タイアップっちゅうやつですね。

ーー曲のタイトルを順に見ていると、1曲目は『ザ・レジスタンス』、2曲目が『鯛獲る』。これは魚の鯛に、「とったど~!」という獲得の獲る。で、3曲目にまた鯛が出てくるんだけど、『鯛アップ(TVサイズ)』というのがございましてね。このバンドは、いろんなことをテーマに曲作りができるバンドである。ということは、いわゆるタイアップというのも、自分たちのメッセージとは別に、どんな内容でも作れてしまうっていうことですよね。

おっしゃる通り。この3曲目の『鯛アップ』は、企業向けです。

ーー企業向け?

はい。企業様向けのプレゼン曲です。

ーーアルバムの中でプレゼンまでやっちゃうんですね。このCiao Amici!リスナー(あるいはGOETHE webの読者)で、今日初めて「オメでたい頭でなにより」というバンドを知ったという方もいるかもしれません。なんなら、会社でラジオを聴いていたり、会社でこのページを閲覧したりしてくれているかもしれません。これは面白いバンドだなと仕事の手を止めて、「彼らにうちの商品について歌ってもらうのはどうか……」なんてことも、ないわけではないんじゃなかろうかと!

可能性は大いにありますね。じゃあ、実際に聴いてもらいますか? 「オメでたい頭でなにより」で、『鯛アップ(TVサイズ)』です。どうぞ。

ーーのっけからちゃんと言ってるもんね。プレゼンになってますよ。「ご希望の尺 お題で 見せつけちゃって 大一番どんな曲もやってみせます お役に立ちたいだけ」

ああ、本音が出てもうた!

ーーCM関係の予算を握っている方はハッとしたんじゃないでしょうかね。「あれ? うちの求めているものすべてを、『オメでたい頭でなにより』なら提供してくれるんじゃなかろうか」ってね。

その通りです。

ーー最後のアウトロなんかね、きっちり尺の調整をしてきたもんね。きっちり90秒。

お手の物ですよ。5秒くらい足らなかったんで、リピートして、フェードアウトさせましたけどね。

ーーハハハ! これが(TVサイズ)のゆえんですね? すごいわ。アルバムのクレジットを見ていると、赤飯さんだけじゃなくて、他のメンバーも一緒に曲作りをしているじゃないですか。詞が先だとか、曲が先だとか、セッションで作るとか、このバンドはどうやって曲を作り上げていくんですか?

うちはね、基本的にテーマ先行なんですよ。雑談をしながら、どういうテーマをやりたいかとか、客席の光景をどう作りたいかとか、みたいなことを話すことから始めます。たとえば、ウォール・オブ・デスって知ってます? ラウドの現場でよくあるんです。右と左にお客さんが分かれて、一斉にぶつかるっていう。あれって、あまり経験がない人からすれば、実際にやるのはなかなか怖いじゃないですか? でも、ラウドロックをやってるんで、ああいうのはあって然るべきだと思ったんです。ただ、オブラートに包んで提示しないと、慣れていない人は引いてしまうぞってなった時に、考えたんです。ぶつかって形になるものを曲にしよう。思いついたのが、シャリとネタです。分かれてぶつかったら、寿司になるでしょ? だから、お寿司の曲を作ったらいいやんていうことで、『wosushi 〜ウォールオブ寿司〜』っていう曲を作って、今は客席でみんなにお寿司になってもらってるんですよ。

ーーなるほど。こっち側はシャリ、そっち側はネタと分かれて、みんなでお寿司を作っていこうと。いきなり「ぶつかれ」って言われても、初めての人は怖いんだけど、寿司になるんだったら恐怖心が和らぐもんね。だいたいさ、寿司ってうまいし。

そう! おいしいんですよ。それに、オメでたいし。

ーー確かに!

で、間奏でぐるぐる回ってもらうんです。いわゆるサークル・モッシュ。これで回転寿司の完成です。

ーーうわぁ。見事やなぁ。ライブハウスが回転寿司店になるという。

だいたい、こんな曲の作り方をしてきましたよ。

ーーこれはかなり変わってますね。じゃあ、これはどうですか? 『歌謡サスペンス劇場 〜わたしがやりました〜』

それは、イントロが「パパパパ パパパパ パ〜パ〜(ご存知「火曜サスペンス劇場」のメロディー)」やったんで、「あ、火サスや」と思って、そのままです。

(ふたりで)ハハハ!

ーー「わたしがやりました」って副題になってますけど、サスペンスなんで、やっぱり解決しないといけませんね。

そうなんですよ。ただね、オメでたいバンドなんで、人が死ぬとオメでたくないじゃないですか。

ーーそりゃそうだ。

でも、自白させないとあかんので、何を自白させようかっていうところで、ポジティブに「私がやりました」って言えるような内容にしました。

ーー最後の『チャバシラタッター』もかなりオメでたい。

ですね。最初はかなり激しいんです。ゴリゴリのメタルなんですけども、思いっきり中指立てたり、腹立てたりした後は、茶柱を立てて、オメでたい気分でやり直したらええやんっていうメッセージソングです。

ーーギスギスしててもあかんでと。

しゃーないやんと。茶柱を立ててくれよと。

ーー今の赤飯さんの話を聞いているだけでも、ライブは相当に楽しいしオメでたいんだろうなと思いますね。初の全国ワンマンツアー「オメでたい頭でなにより“1”マンツアー 〜今 いくね くるね〜」

どやさ。

ーー「どやさ」なんて合いの手が入ってくるくらいだから、調子良く、たとえば大阪3月21日(木)の梅田クラブクアトロなんかはソールドアウトでございます。ただ、今この情報を知った人は、「なんだよ、行けないのか。寿司になれないのか」と思っているかもしれません。なので、ぜひ、またそう遠くない将来に、大阪でもやってほしいところです。

それもありますし、なんなら、ちょろっと美味しいもんを食べに行くくらいの気持ちで、2月25日の名古屋に足を伸ばしてもらうのもよろしいかと。

ーーやっぱり『鯛アップ』って曲を作ってるだけあって、プレゼンがうまいな。

でしょ〜? 4月もね、広島とか高松とかあるから、そう遠くないでしょ?

ーーアルバムを手にしたら、よくペラっと1枚紙が入っていて、ツアースケジュールがそこに書いてあるじゃないですか。僕は今それを手にしているんです。だいたいね、こういうのは、裏には何も書いてないものなんですが、びっくりしたのは、このアルバムの場合、裏が「おみくじ」……違う! 「オメくじ」になってるんですね。僕が引いたのはね、赤吉。

あ、それ、僕ですね。それは各メンバーのイメージの文字が入っていて、それぞれのキャラクターに沿った語調で文言が書かれてますんで。

ーー待ち人が来るか来ないかって大問題じゃないですか。

なんて書いてあります?

ーー「オメでたのライブで出会える」

ハハハ! 都合のええこと言うとるわ。

ーー隅から隅まで、手を変え品を変え、プレゼン! 

でもね、実際に、うちのライブがきっかけで付き合ったみたいな話も聞きますよ。

ーーそりゃ、だって、寿司になるんだもん。ぶつかって、ひとつになるんだもん。

夜もぶつかっていただいてね。リアル・オメでたにまでなっちゃった。バカヤロー! なんつってね。

(ふたりで)ハハハハハハ!

オチた〜〜〜!

ーー完璧でございます。あと、僕が感心したのは、このブックレットの作り込みがハンパない! 鳥肌立つレベルです。基本的に和のモチーフで、曲ごとに凝ってます。浮世絵を取り入れたりなんだり。

うちのデザイナーが本当に天才なんで。

ーー細かいですよ〜。僕はね、これLPでほしいくらい。

ハハハ! 

ーードーンとでっかく見たい。ただ、ここで描写するにも限界があるので、ぜひCDで手に取って楽しんでいただければと思います。では、最後に……

あれ、もう終わりですか。早いなぁ。

ーーアルバムのオープニング・トラックをかけましょうか。これはどっちかというと、笑いというよりもむしろ、本当に頷けるものだよね。

ありがとうございます。そうですね。メッセージをしっかり込めてみました。

ーーうん、込められてる。僕もそう思うっていう内容でしたもん。そんな『ザ・レジスタンス』を聴いてお別れです。迎えたのは、オメでたい頭から、あ、違う……

ハハハ! おうてる、おうてる! 大丈夫!

ーーオメでたい頭でなにより、から、ボーカルの赤飯さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。また呼んでください。

ところで、この記事の頭の僕たちのツーショット写真。ふたりとも、明らかに素直に笑っている。それもそのはず、僕のシャツにビートルズの「イエロー・サブマリン」の刺繍を見つけた赤飯が、カメラを前にこう言ったのだ。

「“We all live in a yellow submarine”って一緒に歌って、サブマリンのリンのとこでシャッターを切ったらええんちゃいます?」

そんなことを言われたら、誰だって笑ってしまうし、歌ってしまう。マイクを離れてもエンターテイナーっぷりがいささかも減じない赤飯に最後まで恐れ入ることになった。

vol.23に続く


畠山美由紀


[ALEXANDROS]川上洋平