プロ野球観客動員が50%に引き上げ! 戻ってきた“当たり前”に思うこと

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。114回目、いざ開講!

「当たり前のように感じていたものが非常に、やはりありがたい」ーーージャイアンツの原辰徳監督が観客動員を1万9,000人に増やした東京ドームについて

先月、東京ドームでジャイアンツの試合を観戦した。観客の上限は5,000人。外野や2階席、3階席はほぼ空席で、内野側に1席おき、2席おきにマスク姿の観客が座っている。打球音や選手の声はよく聞こえてくる。応援は拍手のみで、ホームランが出ても、ファインプレーが出ても、パラパラとした拍手の音だけが響く。やけに薄っぺらい応援歌が聞こえてくると思ったら、スピーカーからの音だった。テレビでは気づかなかったが、そこにかつてのような緊張感もワクワク感もなかった。地方の高校野球の準決勝あたりの雰囲気。プロ野球としては、なかなか寂しい景色だった。

「当たり前のように感じていたものが非常に、やはりありがたい。選手もそうだと思います」

9月21日、観客が増えた東京ドームでジャイアンツの原辰徳監督は、そうコメントした。開幕が延期され、日程も大幅に短縮された今期のプロ野球は、6月19日に無観客の開催からスタート。観戦状況を見ながら、7月10日に観客数上限5000人となり、9月19日からは収容人数の50%まで制限が緩和された。東京ドームの場合、プロ野球の収容人数は最大4万6000人だが、現在は最大1万9000人。それでもこれまでに比べると、約4倍まで増えた形だ。

「球場に入ってもらえると、グラウンド全体が華やかになりますね。待っていた光景でした」

現役時代から常に超満員の観客の前でプレーしてきた原監督にしてみれば、1万9,000人でも寂しい客入りだろう。それでも、無観客や5000人上限に比べればはるかに華やか。そしてそのことがどんなにありがたいことかをあらためて感じたのではないだろうか。

コロナ禍にポジティブな要素を探すとしたら、多くの当たり前が“当たり前ではない”ということに気づかせてくれたことだろう。「客が入るのが当たり前」「仕事があるのが当たり前」「会社から給料をもらうのが当たり前」「好きなときに旅行や会食をするのが当たり前」……。多くの人が危機感をいだき、当たり前であることをありがたく感じたはずだ。

新型コロナウイルスのワクチンや特効薬の開発は、いまだ先行きが見えない。元通りの日常に戻るには、まだ時間がかかるだろう。プロ野球の「上限50%」もチャレンジングな試みだし、今後の観戦状況によってはまた無観客に戻る可能性もある。いま私たちにできることは、決して油断をせず、慎重に日々を取り戻していくことだろう。

そして大切なことは、コロナ禍が終息したときでも「当たり前のありがたさ」を忘れないことだ。この厄災がもたらした社会の変革は、ウイルスや特効薬が登場したとしても進んでいくことは間違いない。要は自分次第。「当たり前に生きる」ための努力をし続けなければならない時代を、私たちはこれから生きていくのだ。


Text=星野三千雄