錦織 圭 英国車が脳と身体を鎮めてくれる~智将の選択 vol.1~

――知略を以って勝負を優位に運ぶ。 そんな「智将」と例えられるリーダーやトップランナーが 今、ジャガーを愛車に選んでいる。 ジェントルな英国車がいかにして勝負へのモチベーションを 高めてくれるかがここから見えてくる。

ストリングスの1本1本に神経を通わせる錦織だからこそジャガーとの共鳴は必然だった

縦横に張り巡らされたストリングスに弾かれ、ボールは線と線の交わるコーナーをえぐり取るようにして飛んでいく。手で投げてもこうはいくまい。その時、錦織 圭選手のラケットは生身よりもはるかに精緻な彼の手となっている。

「僕は人よりも繊細かもしれないですね。ストリングスの硬さが違ったり、ロゴマークのインクの量だったり、細かいところにまで文句を出してしまう。試合で結果を出すためには自分に合ったラケットが一番必要なので、そういうポイントをとても大事にしています。一緒に戦う相棒なので」

ラケット面にはインクで塗られたメーカーのロゴマークがあり、その塗りが厚くなれば物理的な感触は異なってくる。しかし、あくまでも〝物理的には〞というミクロの世界。ほとんどの人が気にも留めないものを錦織は気になってしまう。だから感覚が鈍るのを嫌って、いつもロゴがかすれるほどの薄塗りをオーダーするのである。

ジャガーは、創始者であるウィリアム・ライオンズの「クルマとは人間が作りだすモノのなかでもっとも生物に近いモノ」という哲学に基づき、他では真似できない美しさと性能を融合させた妥協なきクルマ作りを具現化してきた。ラケットに心通わせ、ストリングス1本1本に神経を通わせる錦織だからこそ、両者の共鳴は必然だったのかもしれない。

ジャガーへの愛情がどんどん強くなっています

最初の出会いは伝統あるロンドンのスポーツクラブ「クイーンズクラブ」だった。

「モデルは覚えていないんですが、すごくカッコよくてひと目惚れした」と会場に飾られていた青いカラーリングのジャガーに心奪われた。その頃の錦織はまだ10代のホープ。世界のトッププレイヤーの仲間入りを果たした今では、当時の憧れだったジャガーとの関係は「最高の相棒」と呼べるものに変わった。

拠点を置く米フロリダ州ではいつも一緒である。ジャガーの「F-TYPE(※2シーターのピュアスポーツカー)」のシートに腰を下ろす時間、それが練習に向かうための少しの時間であっても、毎日の暮らしのなかで欠かせない楽しみになっている。

「『F-TYPE』はスピードを体感できて、乗っていて楽しいのが好きな理由。長時間のドライブ苦じゃないので、いろいろな場所に行くことでリラックスもできます。戦略を練ったり練習のことを考えたりもしますが、どちらかというと日常から少し離れて、テニスを忘れられるオフの時間ですね」

心と身体を鎮めたければジャジーなヒップホップ、気分転換をしたければノリのいいEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)、気分に合わせたお気に入りの音楽を添えて駆る。ステアリングを通じて神経はクルマ全体へと行きわたる。

「自分がコントロールして運転するものなので、自然と身体とひとつになってくる。アメリカで乗らない日はないので、愛情がどんどん強くなっています」

今回話を聞いたのは、ケガからの復活の道程でのことだった。昨年8月に右手首の腱を痛め、手術こそ回避したものの、残りのシーズンは欠場を余儀なくされた。テニスにおいて何よりも大事にしてきた手とラケットをつなぐ神経回路に断線が生じていたのである。治療とリハビリを重ねてラケットを使った練習を再開してからも、患部の負担を考慮して空気圧を落としたボールと軽量のラケットから始めなければいけなかった。

世界ランキングは大きく後退し、12月には28歳の誕生日を迎えた。準優勝した全米オープンはもう3年以上前のこと。若手の台頭も加わり、カムバックは容易ではないという見方もある。だが錦織は「2、3ヵ月の間、テニスをしなかったので感覚が鈍っている部分はもちろんある」と認めつつもこう語った。

「今まで培ったものは簡単にはなくならない。3年ぐらいトップ10にいた自信は強く自分のなかにあるので、元のポジションに戻れる自信もしっかりある。プロセスを踏まないといけないのは承知しているし、時間はかかると思います。でも、その自信はなくさないようにしたい」 

リハビリのために滞在していたベルギーではジャガー「XE(※スポーツサルーンのシリーズ)」に乗って、ヨーロッパの街並みを眺めながらドライブする楽しさを知ったという。

「ヨーロッパのほうがアメリカよりも景色がきれい。石畳やお洒落な建物、緑が多かったり、自転車が多かったりでいろんな違った景色があった。そういうのが楽しかったですね」 

最近になって、意外な発見もあった。

「今は『F-PACE』(※ジャガー初のハイパフォーマンスなプレミアムSUV)に乗っているんです。ずっと目線が高いポジションのクルマには惹かれなくて乗る気がしなかったんですが、ちょっと試乗してみようかなと思って。軽い気持ちで試してみたら、すごく運転しやすくて、今はハマっちゃってます」

楽しそうに明かす様子に悲壮感はない。錦織は2009年にも右肘の手術で1年近い長期離脱を経験しているが、当時とはまったく違う心境でケガと向き合えている。

「前回はケガを無理矢理プラスに変えないといけない、という焦りやプレッシャーがありました。ケガをしているのにプラスにできるわけないだろうと思っていた。でも今回は、無理矢理プラスにしなくても自然と気持ちをポジティブにしていける。ケガをしていいことはありませんが、この時間を自分の成長のために使うことができました。復帰して最初の数ヵ月はすごく大変だろうけど、苦しみながら楽しめると思っています」

復活の時はやってきた。以前あったものを取り戻すだけでなく、その手には新たな感覚が芽生えつつある。この半年間、彼は立ち止まっていたわけではなかった。毎日ジャガーに乗り、自分を見つめながら、常に前進し続けていたのである。


JAGUAR XF SPORTBRAKE

¥7,560,000~[税込/ガソリン]、¥7,220,000~[税込/ディーゼル]

2.0ℓエンジンは、最高出力250PSのガソリンと180PSのディーゼルを用意。ラゲッジルームは通常で565ℓを確保。自動緊急ブレーキはもちろん、積載荷物に合わせて調整できるリアエアサスペンションや、コネクティビティ機能を強化したインフォテインメント・システムなど先端テクノロジーを搭載。

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ジャガーコールTEL0120-050-689


Kei Nishikori
1989年生まれ。現在、世界ランキング22位(20 17年12月25日時点)。昨年8 月に手首の腱の裂傷が判明。今年に入り、「リハビリは順調だが、5 セットマッチを戦い抜く準備ができていない」とコメントを発表。1月15日に開幕した全豪オープンは欠場した。下部大会での実戦復帰を経て、2月12日開幕のニューヨーク・オープンでのツアー復帰を予定している。


Text=雨宮圭吾 Photograph=隈田一郎 Styling=松野下直大 Hair & Make-up=SAYAKA