ホテルニューオータニのマニュアルはなぜ薄いのか?


放送作家で、雑誌「ゲーテ」でもお馴染みの小山薫堂さんは、無類のホテル好き。世界中のホテルを巡り、あまりにも好きであるために、ホテルを舞台にしたドラマをつくったほどです。

その薫堂さんは、かつてホテルニューオータニに一年半ほど滞在したことがありました。なぜニューオータニで暮らしたのか。設備やサービスが便利で快適で心地よいのはもちろんですが、なによりも、そこでいろいろな発見をすることが楽しかったからだそうです。

例えばドアノブひとつにしても、こだわりを感じるものを見つけると嬉しくて仕方がない。空調やバスルームなどにしても、ドアマンや清掃スタッフにしても、その仕事のすべてに、お客様を喜ばせるための「仕掛け」や「工夫」が詰まっていて、それを見つけていくことがおもしろくて仕方なかったそうです。

そして、なによりもホテルとゲストとの距離感が絶妙だったそうです。常に相手のニーズをくみ取り、それに応えようと努力する姿勢に感動。そこにはもてなす側ともてなされる側の理想の関係があったと言います。

これって"結婚"においてもいえることではないでしょうか。

家族、というものはひとりでは始められません。ふたりが最小単位です。その最小単位から育ていくものです。お互いが相手を思いやり、常に喜んでもらえるよう「やさしさ」や「サプライズ」を忘れなければ、家族は大きく育っていきます。

そして距離感が大切です。本当に必要なときに必ず側にいる、そんな絶妙な距離感をつかんでほしいと思います。そのためにはいつでも相手の次を「予測」しなければなりません。将棋と同じで、数手先まで見通し、次の一手を決定していく。もちろん、予測は外れることもあるでしょう。はじめは外ればっかりかもしれません。しかし、それを繰り返すことで、ふたりの間に横たわる一定の距離感をつかんでいくことができるはずです。

そういえばホテルニューオータニのサービスマニュアルは40ページしかないそうです。これって普通は考えられないこと。効率を求めて、マニュアルで縛っていては、ホテルとゲストとの間に本当にいい距離感、心地よい関係は生まれないからでしょう。

いま本屋に行けば、たくさんの「結婚マニュアル本」が書棚に並んでいます。「〇のトリセツ」といった本には、たくさんのことが書かれています。でも、マニュアルにしたがっていては、家族は決して大きく育つことはありません。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテは言いました。雑誌「ゲーテ」のタイトルにもなった世界亭文豪の言葉です。

『愛は支配しない、愛は育てる』

家族ほどシンプルで不思議、頑丈で壊れやすい、ものはありません。どうか、しなやかな家族、心安らぐ家族、笑顔あふれる家族、愛いっぱいの家族を育てる努力をふたりで手を取り合って、たゆまずに続けていってください。

おめでとう。