【筋肉投資】漫画『刃牙』の板垣恵介「筋肉を美しく描くには、まず己を鍛えるべし」

なぜ第一線で戦う者ほど、過酷なトレーニングを自らに課すのか。それは、トレーニングはもはや仕事の一部と化しているからだ。多忙な日常のなか、時間を確保しトレーニングという地獄の苦しみを乗り超えることで、仕事でのどんな逆境にも耐えうる精神が身につく。常に試練を己に課すからこそ、困難な仕事も達成できるのだ。本特集では、日々、限界に挑戦し続ける11名の猛者が登場。彼らの努力の結晶、筋肉に投資するその生きざまを、とくとご覧あれ!

自衛隊仕込みの独自のトレーニングで己を追いこむ!

ボディビルダーのような肉体を持つキャラクターが登場する、インパクトある作風が特徴の大人気格闘技漫画『刃牙』シリーズ。その著者である漫画家の板垣恵介氏が本格的に肉体改造を意識したのは、ここ2〜3年だという。

「人前に出る機会もあるし、"カッコよくしなきゃ"という、そんな感じだった。それに、筋肉を美しく描くなら、自分も鍛え続けてなければ笑われる、と思ってね」

仕事部屋にいる時の服装を見ればその美意識も頷ける。作画中もスキニーなダメージデニムにブレスレットやネックレス。誰に会うわけでもない時も、身繕いはきちんとするのが信条だ。

「コンビニに行く道すがらだって読者に会うかもわからない。ジャージだとヤバいでしょ」

62歳とは思えない、無駄のない鍛えられた身体。仕事場近くのジムで、週に2〜3回、70〜80分のトレーニングと10㎞ほどのロードワークの成果だ。

「気持ちよさやカタルシス」を感じる描写を心がけていると言う。「笑っちゃうほどスゴい」が理想。

「若い頃はやればすぐに身体が仕上がるけど、年齢を重ねてからはちゃんと取り組まないと維持も難しい。トレーナー? いないよ。身体の状態を見極めながら、自分でメニューを組んでやっているんだ」

まず最初は、62.5キロの負荷で胸筋を鍛えるチェストプレス10回を5セット。弱点である胸筋から鍛えるのが板垣流だ。次に、板垣氏の身体で一番筋肉がつきにくい、という肩回りの僧帽筋や三角筋などを中心に、マシンやダンベルを使用しながらトレーニング。見た目以上にハードなのが、懸垂だ。それを10 回こなしたあと、ラットプルマシーン10回を55キロで2セット。

インターバルをおいて再び肩回りを鍛えていく。自己流と謙遜するが、板垣氏は自衛隊出身。それも陸上自衛隊での最精鋭部隊である第一空挺団(パラシュート部隊)に在籍していたバリバリの猛者で、訓練では自分を極限まで追いこんできた。

「ただいるだけで汗が噴きだす8月の富士山麓の起伏を、30キロの装備を担いで3日寝ずにひたすら100キロ歩き続ける訓練があるわけ。水は1日水筒1本のみ。その行程を2夜3日っていうんだけど、2泊じゃないんだ。寝ないで真っ暗闇の中、前を歩く鉄帽の夜光テープだけを目印に夜を徹して進むうち、幻覚を何度も見た。あれを毎夏経験したら、漫画制作の修羅場や、日常のトレーニングなどはまるでなんちゃない。よくサボるけどね」

準備運動なしでウェイトトレーニングを始める板垣氏。ショルダープレスで三角筋、僧帽筋を攻める。フォームは崩れることなく3~4セットをこなす。準備運動なしでウェイトトレーニングを始める板垣氏。ショルダープレスで三角筋、僧帽筋を攻める。フォームは崩れることなく3~4セットをこなす。


ティップネス国分寺

住所:東京都国分寺市本町4-12-1
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営業時間:9:45~23:00、土曜~22:00、日曜・祝日~20:00
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Keisuke Itagaki

1957年生まれ。高校卒業後、自衛隊入隊。4年目でB型肝炎を患い5年目で除隊、漫画家の道へ。『刃牙』シリーズは累計7500万部を誇る。

Text=三井三奈子 Photograph=太田隆生