須藤元気とトレーニング あの人はどうしてそんなに若いのか?

格闘技からダンスへ――。トレーニングを続ける須藤元気。肉体の鍛錬は脳の感覚野も磨き、自分の「好き!」に忠実になる。好きな何かにわくわくして取り組む姿こそ美しいという。

やりたいことだけやる男に。トレーニングで培う変幻自在な思考術
須藤元気 age35

 都内にあるスタジオを訪れると、須藤元気がベンチプレスを行っていた。60キロのバーベルをさくさくと挙げる。汗もかかない。元格闘家の須藤には箒(ほうき)を扱うほどの負荷なのだろう。それでも、血中に乳酸が溜まり、大胸筋が張り、上腕が太くなるのが、トレーニングウェアの上からでもわかる。
 2006年に格闘家を引退した須藤は、レスリングの指導と並行して、スーツ姿の男性7人が行うパフォーマンスユニット「WORLD ORDER」で活動している。担当はダンスとヴォーカル。日本武道館でのライブを控え、筋力トレーニングで身体をつくっている時期だ。
身体を絞っていくと精神も研ぎ澄まされる
「今、午前はトレーナーについて1時間ほど、胸、肩、背中、下半身と、身体を大きく4分割して鍛えています。午後はダンスのレッスン。こちらは1時間半くらいです」
 トレーニングと並行して、食事のコントロールも行う。
「シャープに動ける身体にするために、糖質を減らし大豆や魚などタンパク質主体の食生活を続けています。体内で糖として蓄積される炭水化物を控える食生活です。主食は玄米を少量食べる程度にして、米から造る日本酒も少しの間はがまん。体内の糖分を減らして脂肪を燃やすんです。この時期は味覚が特に敏感になり、食事がおいしくなります。その一方で、添加物のような不純物もわかるので、食事はオーガニック中心です」
 炭水化物をすべてやめれば、体脂肪はもっと落ちるが――。
「ダイエットで糖質を完全にカットする人、いますよね。そのほうが身体は絞れるでしょう。でも、免疫力や集中力や思考能力は落ちる。糖質カットはほどほどがいいと僕は思います」
 ライブまで1週間を切ったら、逆に糖の摂取を増やしていく。
「一度絞り上げた身体に今度はエネルギーを蓄え、ライブの場で爆発させる。格闘家の頃から行っている調整法です」
 ライブ前のこの時期は、味覚同様五感のすべてが鋭くなる。
「神経もどんどん研ぎ澄まされてくる。肉体が精神と連携していることを実感できます」
 トレーニングは肉体を鍛えるだけではなく、脳の感覚野をいい状態にしてくれるのだ。
常にわくわくして行動する人が美しい
「思考は脳の前頭葉がつかさどっていますよね。人の思考の基本は損得勘定とも言い換えられる。自分が得する、あるいはリスクを回避するためにどう行動すればいいかを常にジャッジしているわけですから。ところが、トレーニング時には、感覚の脳である頭頂葉が活発になる。すると、損得ではなく直感優先になる。単純に、やりたい! と感じるものを行うようになります」
 そのジャッジに須藤は素直に自分を委ねる。
「前頭葉の判断にだけ任せたら、IQの高い人が常に有利です。自分より頭がいい人はいくらでもいるので、勝負になりません。でも直感を大切にして、心からわくわくする何かに全力で取り組むと、自分で自分に驚くような発想や成果が生まれます」
 それが、須藤には格闘技であり、音楽やダンスだった。
「人間は“Have To”ではなく“Want To”でないと、続かないし成果も上がらない。だから、自分の心の声に従ってやりたいことだけをやると決めています。男女にかかわらず、美しい人、輝いている人というのは、自分の好きな何かをやっている人だと僕は思う。会えばすぐにわかりますよ。損得ではなく、純粋に自分がやりたいことで行動している人って、明らかにわくわくしていますから」

規格外の仕事をする男
肩書き1 ミュージシャン

「子供の頃、格闘家かミュージシャンか進路を迷った」という。格闘家引退後はスーツ姿でシステマティックな動きを魅せる男性7人のパフォーマンスユニット「WORLD ORDER」をスタート。海外でも評価される。

肩書き2 作家

著述業も順調。『風の谷のあの人と結婚する方法』(幻冬舎文庫)は20万部のベストセラー。『須藤元気のオフィス・トレーニング』(主婦の友社)に続き、『やりたい事をすべてやる方法』(幻冬舎)が4月19日より全国発売。


肩書き3 指導者
アマチュアレスリングのみならず総合格闘家としての豊富な経験を生かし、母校の拓殖大学レスリング部監督となる。2009年、2010年には学生の主要大会3連覇を達成。最優秀監督賞を7回受賞。世界学生レスリング日本代表監督も務める。

Genki Sudo
1978年東京都生まれ。格闘家として数々の実績をあげ、世界学生レスリング日本代表監督、拓殖大学レスリング部監督を務める。パフォーマンスユニット「WORLD ORDER」も立ち上げ世界的な評価を受けている。

Text=山村光春、森本裕美、井上健二、山内宏泰 Photograph=吉場正和、太田隆生、高橋 葉


*本記事の内容は13年4月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい