注目の"メタモル"市場! 男性用かつらは今やファッションアイテムだ!

男性用ウィッグ、すなわち“かつら”のイメージが大きく変わりつつある。これまでウィッグの着用には、「薄毛を隠すためのもの」「できれば人には知られたくないもの」といったマイナスの気持ちを抱きがちだった。だが、最近は「外見を変えることで気分を上げたい」というプラスの発想でウィッグを楽しむ人が増加している。薄毛対策ではなく、“メタモルフォーゼ願望”を満たすアイテムとしてのウィッグについて、アデランスに話を聞いた。


薄毛対策からファッションアイテムへ。変化する男性用ウィッグ

1968年に創業、現在は世界19の国と地域に64社を展開するトータルヘアソリューションのリーディング企業、アデランス。代表取締役社長・津村佳宏氏は、ウィッグの市場動向についてこう話す。

「もともと男性用ウィッグのニーズは薄毛対策が中心でした。でも、最近はファッションアイテムとして使用する人が増えています。アデランスでは1980年代にミュージカル『キャッツ』のウィッグを開発。その後、映画、テレビ、コンサートなど、エンターテインメントの世界で幅広くアデランスの技術が用いられています。最近はファッションデザイナーからの協力依頼も多く、パリコレのモデルたちにもアデランスのウィッグを使っていただいています」

ファッションアイテムとしてのウィッグは、まず女性に浸透。日によってロングヘアやショートヘアを使いわける、流行のヘアスタイルやカラーを楽しむ。そんな気軽さがウケて、ウィッグは身近なアイテムになった。そして、今、そのニーズが男性の間でも高まりつつある。

アデランスでは、20~60代の日本人男性に意識調査を実施。「あなたは普段とは違う自分に“変身”(外見や見た目を変えることで気持ちを切り替えたり気分を上げたりすること)をしたいと思ったことがありますか?」という問いに、79.5%が「ある」と回答。また、「変身することによって何が得られるか?」との問いには、「自分に自信を持てる」(56.6%)、「ポジティブになる」(46.4%)、「明るくなる」(40.0%)、「人生がより豊かになる」(37.0%)、「異性にモテる」(35.7%)といった回答が得られた。

「意識調査からもわかるように、日本人男性は変身願望が強く、75.9%もの人が自分の見た目を変えたいと考えています。変身には洋服や靴を変えるなど様々な手段がありますが、髪型も重要な要素。例えば、普段はショートカットのビジネスパーソン。趣味でヘヴィメタのバンドをやっているならロングヘアのウィッグ、ダンサーならドレッドヘアのウィッグを着用する。ガラッと印象が変わりますよね。目的や気分に合わせて洋服や靴を選ぶように、髪型でも、もっとファッションを楽しんでほしいですね」

“メタモル市場”の規模は薄毛対策市場の約5倍

薄毛対策ではなく、ファッションとしてウィッグを楽しむ市場を、アデランスでは“変身”という意味の言葉を使って「メタモルフォーゼ市場」または「メタモル市場」と表現。このメタモル市場の規模が、今後大きく拡大していくと予想している。

「薄毛対策の市場規模は、金額ベースで約6000億円。一方、各個人がメタモルフォーゼのために使っても良いと思う金額から算出したメタモル市場の推定規模は約2兆9000億円。実に約5倍にもなります。さらに、もうひとつ、今回の調査では自己プレゼンの際には服装よりも髪型への関心が高くなっていることがわかりました。どういうことかというと、日本人男性は様々なシチュエーションで服装に注意を払います。しかし、ビデオ会議やSNSへの投稿など自己プレゼンの機会には、服装よりも髪型により高い注意を払います。SNSのプロフィールなど顔写真を使う機会が増えた現代社会では、髪型への関心は今後ますます高まっていくでしょうね」

ウィッグで自分も周囲もハッピーに

右:楠木建氏、左:高井竜司氏。

実際にファッションとしてウィッグを使用している人に、使い始めた理由や使用感を聞いた。1人目は、ARSセールス&クライアントマネージメント本部に勤務し、元サッカー日本代表の中山雅史氏のマネージャーを務める髙井竜司氏。

「以前から薄毛でしたが、自分では特に気にしていませんでした。でも、中山さんに“何事もチャレンジだよ”と言われ、アデランスが実施したMr.アデランスコンテストに出場。ファイナリストに選ばれました。それからウィッグを愛用していますが、まずは自分よりも周囲が変わりましたね。

ウィッグを着けた当初は、知り合いがみんな僕の頭を見て笑顔になるし、家庭でも笑いが増えました。周りの人がハッピーになるなら、僕もうれしい。それから職務質問を受ける機会が減りました。以前は人相が悪く(笑)、1日2回、職質を受けたこともありましたが、ウィッグをつけてから6年間、職質ゼロです」

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏もウィッグ愛用者。

「僕は趣味でロックバンドを組んでいて、ステージではウィッグを着けています。やっぱりロックはロン毛じゃないと(笑)。気分が高まるし、自信を持ってステージ上を動き回れます。演奏がうまくなりたいなら、高価な楽器を買うよりも、ウィッグを買うほうが効果的かも(笑)。国際企業戦略研究科教授の立場で言うと、アデランスのウィッグは“非日常ではなく異日常。だから市場が広がる可能性が大きい”と思います。

非日常とは、ハロウィンのようなイベント的なもの。ハロウィンでおもちゃのウィッグを着ける人がいますが、その日限りのもので、使った後は捨ててしまう。一方、異日常とは“もうひとりの自分”。僕にとってはそれがロックですが、一日限りのものではないので、一度購入したウィッグは長く使います。だから市場が広がる可能性が高いのです。アデランスのウィッグ、そしてアデランスが提唱するメタモル市場は、ビジネス視点でも注目度が高いと感じます」


Text=川岸 徹