サッカー川島永嗣の美しき肉体

 「美しさって、何だろう」  日本代表で、GKとして活躍する川島永嗣は、ゆっくり言葉を紡ぎだしていった。

「例えば、格好いいと言われる人はなぜ格好いいのかを一時期よく考えたんです……」
 例に挙げたのは、日本代表でともにプレーした選手だった。
「浦和レッズの鈴木啓太クン。苦労や悩みを他人には全然見せなかったし、サッカーに対してもとにかく一生懸命。ただ、オフになって、遊ぶ時はスパッと遊ぶ。その切り替えが上手かった。格好いい人というのは、外見に生き方が出ていて格好いいなと感じますね」
 格好よさを例に、川島は美しさをこんな風に定義する。
「美しさって、結局、表面に表れるものですよね。でも一見、表から見えないよさを内側に秘めているから、美しいのかなと思いますね」
 そんな川島の話を聞くと、肉体の魅力の秘密が垣間見えてくる。今回の撮影では、カメラマンの求めに応じて、川島は次々とポーズを取っていった。ポーズが変わるたびに、筋肉の表情も変わっていく。
 背中を向ければ、肺が突き出ているかのように二つのこぶが浮かび上がる。前を向けば、至る所に筋肉の筋が見える。それでいて、ボディビルダーのような生々しさはない。筋肉の多彩な表情が映し出すのは、美しさだ。
 美しさの源泉は、明確な意図のあるトレーニングにある。
 海外のサッカー選手の中には、明確な目的もなく漫然とトレーニングを行う者も少なくない。
 だが、川島は違う。
「プレーの質を上げるためにトレーニングをするべきと思うんですよ。見た目の筋肉とか、(バーベルなどの)重さなんかは気にしません」
 川島のトレーニングにはゴールキーパーとして活躍するための狙いがある。無駄はない。それが美しさとなって浮かび上がるのだ。

 そんな考え方は、彼のファッション観にも通じている。川島はシンプルなものを優雅に着こなすイメージがある。派手ではない。上品で落ちついている。そんな彼のこだわりは、服を着るという行為を楽しむことだという。
「今日はどんな服を着ようかなと考える毎日のほうが楽しいと思うんですよ。例えば、同じパーカとデニムを着るにしても、その中にTシャツは何を着るかで変わってくる。そういう楽しみも味わいたい」
 心の内側にある楽しさと、鍛えられた肉体が、川島の佇まいを魅力的にしている。
 美しい花がいつかは枯れるように、美しさは永遠ではない。ならば、次に花を咲かせるためにはどうすればいいのかを考えるのが、成長を望んでやまない川島なのだ。
「身体のことでいえば、ベルギーに来て、背筋は強くなった。ただ、海外で何が本当に必要なのかはこっちでプレイして、感じないとわからなかった。同様に5年後の自分が何を必要としているのか、今はわからない。だからその時々で、自分の身体で何が必要なのかを感じていく」
 もちろん、外面に表れる身体だけではなく、内面でも変化を恐れない。チームのゴールを守るキーパーには、相手チームを恐れさせるような威圧感やオーラを手に入れたいと強く求める選手も少なくない。
「そう考えた時期もありましたよ。でも、今は意識していません。チームによっても、時期によってもやらなきゃいけないことは違いますから」
 ゴールキーパーは、特殊なポジションだ。相手にゴールを許せば批判される。相手のシュートを上手く防いでも、ゴールを決めた味方だけが賞賛を浴びることが多い。それでいて、勝敗を左右するチームには欠かせない存在だ。そんな特殊な役割を生業にする川島にとって、仕事とはいったい何だろうか?
「サッカーはチームスポーツですが、結局、自分自身が成長していくことに楽しみを見い出したり、難しい状況の中でもユーモアを持つ。そうやって自分の人生や自分の置かれた環境を楽しむことが、充実した生活につながっていくと思いますね」


Eiji Kawashima
1983年3月20日生まれ。埼玉県出身。サッカー日本代表のゴールキーパー。浦和東高校→大宮アルディージャ→名古屋グランパス→川崎フロンターレを経て、ベルギーのリールセへ移籍。現在チームではキャプテンを務めている。185センチ、80キロ。
http://eiji-kawashima.com/

Text=ミムラユウスケ Photograph=フレデリック・アランダ
*本記事の内容は12年1月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい