【遠藤光男の物申す!】トレーニング界の伝説がスポーツ団体の運営を斬る

昭和40年代、黎明期の日本ボディビル界に彗星の如く登場し、注目を集めた男がいた。その名は遠藤光男。 昭和41(1966)年、24歳の時にボディ・ビル・ミスター日本となり、世界大会にも出場。ドーピング三昧の海外選手を向こうに回して優秀な成績を残し、翌年、自身のジムを東京・錦糸町に開設。日本に於ける筋力トレーニング指導の第一人者としての地位を確立していく中で、作家・三島由紀夫や俳優・高倉健らとも親交を持ったほか、相撲界とも関わりが深く、千代の富士、白鵬を始め7人の横綱を指導。また国際プロレスのリングではレフェリーとして活躍し、数々のレスラーにもトレーニング法を伝授したことも知られている。 そんなスポーツ界のご意見番・遠藤光男氏が、2020東京五輪を控えながら、ゴタゴタが続く日本スポーツ界に「物申す!」。今回は、スポーツ団体の運営をめぐって。 


アームレスリング連盟の会長として

以前は、ボディビルの団体の役員を任されてやっていた時代もありました。もう何十年も前もなりますが、日本ボディビル・フィットネス連盟の筆頭副会長を長年やっていまして、現在は千葉県のボディビル・フィットネス連盟の会長をやっています。それから世界大会の選手の派遣するときの団長も何十年もやっていました。

アームレスリング連盟も立ち上げて、世界大会にも、もう20回ぐらい選手を連れていってます。自分のジムをつくってから10年後に立ち上げましたので、41年になりますね。今も会長をしていますが、いずれは引退しなきゃいけないんですが。

昔、テレビ東京が東京タワーの所にあったとき、夜11時から5分間『勝抜き腕相撲』っていう帯番組をやっていたんです。そのとき、私やチャック・ウィルソンで、いろいろ協力していました。当時、予選会に全国から1000人ぐらい集まってくるほどで、すごく人気があったんです。

そしたら、そのディレクターが、「遠藤さん、アームレスリング、こんなに人気あるなら組織つくったらどうでしょうか」と言ってきたので、じゃあそうしようかっていうことでアームレスリング連盟を立ち上げたんです。

初めの頃の大会では、ライトハンドだけで、軽量級、中量級、重量級の3階級で、トータルで45名程度の出場者だったんです。それが、今は約10倍の出場者になっています。ライトハンド、レフトハンドの両方があって、階級も増えていますから。全日本大会に出てくるのは400名ぐらいですけども、今は全国に支部があって、連盟に選手として登録しているのは、だいたい5000名ぐらいですかね。

現在も全日本大会を開催していますし、その他に都道府県大会、東北、関東、九州、関西オープンとかのブロック大会もあります。あとは会社のイベントとか、大学祭でやることもありますが、そういうイベントの際に依頼があれば、うちの連盟のほうで協力して、競技台の貸し出しとレフェリーの派遣も行なっています。

連盟としては、日本スポーツ協会加盟を目指しています。現在、支部のいくつかが、都道府県の体育協会に加盟してるんですよ。これからも何ヵ所か増えていく予定です。今年2019年の茨城国体のとき、国体の正式種目ではないんですが、デモンストレーション競技でアームレスリングが入るんです。これまでにも、2017年の愛媛大会でも入りましたし、約20年前の神奈川国体でも入っていたことがありましたね。そうやってアームレスリングが広がっていくような活動を続けているわけです。

今でもうちのジムで、土曜日にアームレスリングの練習会を開いてるんです。指導員も何人かいるんですよ。アームレスリングの戦い方のパターンとしては、大きく分けると三つぐらいあるんです。寝てるのと、横のと、下に持ってくのと。その三つの中で、複合的な技を身に付けると強くなっていくのが、選手たち本人もだんだん分かってくるわけですよ。

世界大会に20年前から毎年選手を連れていってますから、そこで目にした技術とか、全日本大会を開いてきた中で、毎年のチャンピオンの戦いぶりだとか、それから、ときどき世界チャンピオンをゲストで呼んで、練習マッチをやらせたりして、そのときに頭に入ったやり方なんかを指導しているわけです。

自分も、昔は選手としてやっていましたからね。手をしっかり握って確認するだけで、だいたい有利不利が分かるんです。握ったときに1ミリ深く持ったほうがいいとか、微妙なところがあるんですよ、どの位置で構えたらいいかとかね。その組み方を覚えるまでに、数ヵ月かかるんです。最近は、あまり口出ししないようにしていますが、「もう少し肩を近づけろ」とか「引く力をもっと意識して、こぶしを真ん中に持ってこい」とか、そういう基本的なことはアドバイスしてますね。

トップに立つ人材は私利私欲を捨てて臨め

組織というのは、立ち上げた最初は勢いがあるので、どんどん支部ができたりしてくるんですが、あるレベルまで行くと、いろんな問題が出てきますよね。やっかみとか、揚げ足取ったりとか。組織をつくって立ち上げるのはいいんですけども、いい人材を育てて、しっかりしたものにするっていうのは、なかなか大変ですね。

支部連盟のトップに立つ人がしっかりしていれば、うまくいくんですが、そうじゃない場合は大変ですね。ただ強いだけの人がトップになったりすると、強けりゃ偉い、弱けりゃ偉くない、そういう世界もあるわけですから、その辺の難しさもあります。

他の団体のことはあまりよく分からないし、口を挟むことはできませんけども、やはり私利私欲を捨ててトップに立っている人がいればいいいんですけども、そうじゃない人、つまり肩書きの好きな人がトップに立っちゃうと、いろんな問題が起きる可能性はありますね。

それと、その配下というか下部組織の人たちが、そのトップの人とどういう付き合いをしていくかということで、いい面、悪い面も出てきてしまう。そういうのをちゃんと見抜いて、きちっと指導できるかどうか。上に立つというのは、いろんな意味で、お金の問題も含めて、難しい面がありますね。

ただ、アームレスリングは、はっきり言ってお金がそんなに動かない。あまりお金のない組織だったので、そういう問題はあまり持ち上がらなかったんです。

ですが、例えばIOCとかJOCに加盟している団体の場合は、補助金問題がありますよね。オリンピックの競技団体になると、年間の予算が何十億っていうところもありますから。そうなると、いろんな人の意見が入り乱れたりして、いろいろな問題が起きる可能性があるんじゃないかと思います。

それと、代表選手の選定の仕方なんかも含めてね。

アームレスリングの場合は、代表選考会で勝った選手を上位から派遣するやり方なので問題は起きません。派遣する人数に余裕がある場合は、上位から希望者を呼んで派遣する、そういうやり方なんです。全日本大会が代表選考会になりますので、そこで各クラスの上位2名が希望すれば派遣します。上位2名が行かない場合は、3位とか4位の人を繰り上げで派遣する場合もあります。

ボディビルの場合は、一応クラス別、体重別なんです。国内でもクラス別、体重別の大会をやっていまして、そこで上位になった人が世界選手権に派遣される仕組みになっています。

アームレスリングのように勝負で雌雄を決するのと違って、ボディビルの場合、審査で優劣をつけるのが、なかなか難しいんですよね。見た目で判断しますから。審査基準はあるんですけれども、なかには審査員の好みっていうのも出てくるわけですよね。筋肉の量の多い人が好きだとか、筋肉は細いけど締まってる人が好きだとかっていう。そういう違いも若干あるんですが、そういうことがないように、一応、基準はできているんです。でもまあ、人間がジャッジする競技ですから、その辺はちょっと難しいところはありますね。

ジャッジ競技の順位付けの難しさ

昨年、体操界のことも、代表の選考やジャッジのことも含めて、すごく話題なっていましたが、いやあ、昔はもっとあったでしょうね。オリンピックのときでも、共産圏のジャッジが出てくると、自分の国の選手はポンと上げるとか言われていたものです。よく大会後に、そういう批評の記事が出ていましたけども。最近はだいぶ改善されたと思いますが。

ボディビルの場合は、審査を大体3回から4回するんですよ。まず第1次審査では、例えば30人の選手が出ていたら、決勝に残るのが10人なら10人をまず選ぶわけですね。続く第2次ラウンドでは、例えば1番と3番と5番の選手を前に呼んで、自分が納得するまで比較して順位付けをするわけです。それで1位から10位までの順位を付けて、第3次ラウンドになると、今度はフリーポーズといって、規定じゃなくて自分が選んだ音楽に合わせて、自分が好きな演技をする。これで最終的な順位を付けるっていうやり方なんです。

極端なことを言うと、選手から審査員席までと、客席までとの距離とが違うわけでしょう? そばで見たらよく見える場合もあるし、逆に離れてるとものすごくよく見える人もいるわけですよ。なので、会場から「えーっ」とかっていう声も出ますよね。でも審査員と選手は大体3、4メートル、離れても5メートルぐらいの近場でジャッジしいますから、審査員に狂いはないと思うんです。

筋肉の量の多い人は遠くから見ると、すごくよく見えるんです。筋肉の量なくても、カット、切れてる人は、そばで見たほうがよく見えるんです。もちろん誰が見てもいい人は残りますが、最後は粗探しになるわけです。例えば上半身はいいけど下半身の筋肉がちょっと発達していないとか、逆に足は発達してるけど背中の筋肉が弱いとか。筋肉のバランスを、前、横、後ろ、さらに腕、肩、胸、背中、腹筋、背筋、足とか、そういうのを細かく見ながら、ここはいいけど、ここはダメとかって、ジャッジしていくわけです。だから、なかなか難しいんですが、ジャッジの技術も上がってくれば、全体的な総合判断をして順位を付けて行けると思っていますけどね。

ボディビルも昔と今とでは、ジャッジも含めていろんなことが改善されて変わってきています。初期の頃は、どっちかというと筋肉の量の多い人のほうが有利だったんです。腕の太い人とか、筋肉がしっかり付いてる人ですね。それが年々、仕上がり状態っていうんですか、仕上がりがいい悪いっていうことがメインになってきたんですね。世界的にもそうなってきています。

どの競技も、目で見るジャッジっていうのは多少の変化はあると思いますね。体操なんかでもね。体操だって、床があって、鞍馬があって、鉄棒があって、女子は平行棒や平均台があるわけでしょう? 演技の仕方が、すべてにおいて変わってきていますからね。難易度の高いのを入れたほうがいいとか、これ入れなくても満遍なくこなせば結構いい点いくとか、そういう変化も生じてきていますから。競技のレベルが上がってくれば、難易度を高めるしかジャッジの仕方がなくなってくると思うんです。その流れで、現在に来てると思いますよ。


Text=まつあみ靖 Photograph=吉田タカユキ


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遠藤光男
遠藤光男
1942年東京都生まれ。日本ボディビルディング界の第一人者で、24歳だった'66年のボディビル・ミスター日本となる。翌年に東京・錦糸町で遠藤ジムを開き、その年にはモントリオールで開催された世界選手権で3位に。三島由紀夫や勝新太郎とも親交があり、大相撲界、プロレス界など幅広い人脈を誇る。
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