【遠藤光男の物申す!】トレーニング界の伝説が今のパワハラ問題と指導法を斬る

昭和40年代、黎明期の日本ボディビル界に彗星の如く登場し、注目を集めた男がいた。その名は遠藤光男。 昭和41(1966)年、24歳の時にボディ・ビル・ミスター日本となり、世界大会にも出場。ドーピング三昧の海外選手を向こうに回して優秀な成績を残し、翌年、自身のジムを東京・錦糸町に開設。日本に於ける筋力トレーニング指導の第一人者としての地位を確立していく中で、作家・三島由紀夫や俳優・高倉健らとも親交を持ったほか、相撲界とも関わりが深く、千代の富士、白鵬を始め7人の横綱を指導。また国際プロレスのリングではレフェリーとして活躍し、数々のレスラーにもトレーニング法を伝授したことも知られている。 そんなスポーツ界のご意見番・遠藤光男氏が、2020東京五輪を控えながら、ゴタゴタが続く日本スポーツ界に「物申す!」。今回は、パワハラ問題と指導法をめぐって。 


みんな、何でもかんでも狭い目で見ないでもらいたい

昨年はスポーツ界で、様々な問題が噴出しました。いろんな方の名前も取り沙汰されましたね。

アマチュアボクシング協会の山根明元会長とは付き合いはないですが、日本レスリング協会の会長の福田富昭さんとは、親しいんです。福田富昭さんとは、彼がまだ若い頃、よくいろんなスポーツ界のパーティで一緒になって、よく話し込んだりしたものです。

日本ウエイトリフティング協会会長の三宅義行さんとは、ときどき電話で話しする仲なんです。

三宅さんにもパワハラ騒動が持ち上がりましたが、そんな人じゃないんだろうと思います、いい人なんですよ。現役のとき、メキシコシティオリンピックでお兄さんの三宅義信さんが優勝して、義行さんは銅メダル取ってますから、その実績もあるし、娘さんも指導してね。だから、指導に熱が入れば、そういう言動が出ることがあったのかもしれないですね。

何とかこの子を強くしてやろうと思えば、どうしてもそういう言動が出ちゃっても仕方ないかなと思いますけども。それは、髪の毛引っ張って、ひっぱたいたりとか、蹴飛ばしたってなら別ですけども、そうじゃなくてね。許容範囲内のハラスメントってのはあって不思議じゃないと思いますよ。その子のためを思ってのハラスメントだったら。

それで奮い立つ子もいるわけですから。鬼の首取ったように「ハラスメント」ってやっちゃってますけども、悪い面だけで判断しないで、いい面だってあるっていうこと。

格闘技というのは、どうしても体罰が付きものになってしまうようなところがあるんです。「腰が高い」とか、「もっと足、開け」とか、そういうところを理路整然として説明してたら間に合わないでしょう? 練習中に「ほら、そこだ」、「ほら」ってやる。で、はっと選手が気が付いて直すこともできるし。

ひとたび試合になったら、もう、監督もコーチもあんまり立ち入りできないですから、練習のときしか気合い入れたり、熱血指導できないわけでしょう? そういうときに情熱持って指導するってことは、線引きは難しいけれども、良識の範囲内で許されるハラスメントだって十分あると思うんですよね。その辺は、みんな、何でもかんでも狭い目で見ないでもらいたいですね。

今、あらゆるスポーツで体罰はダメみたいなことになってきてますけど、あれは教わる人たちも弱くなって、マスコミに操作されてる。なんかされたら、すぐマスコミに訴えろとかね。

そのときはパワハラだと感じても、後になってみると尊敬されているコーチや指導者も、たくさんいますからね。あの先生の一言で自分は立ち直った、っていう人だっているわけですよ。そういう、いい話は載せないで悪いことばっかり載せちゃう。それでは、ちょっと寂しいですね、スポーツにずっと携わってきた人間としては。

ちょっとしたことでパワハラだと言われる風潮がありますが、そういう指導っていうのはなくならないと思いますね。われわれだって練習やってて、「もう一回上がれ」「やってみろ」って言いますよ。これだって場合によっちゃパワハラになっちゃうでしょう? 

なにくそと思う気持ちも育てることも指導者の役割ですから。なにくそと、負けてたまるかと。よし、このコーチを見返してやろうと思って頑張ることだってあるじゃないですか。そういうことが根付いてくることも期待してるわけですよ、指導者っていうのは。なにくそっていう気持ちね。それがなかったら、選手も何も育たなくなっちゃいますよ。

今と昔、スポーツに向かう姿勢の変化

まあ、スポーツ界と一口で言っても広いですからね。どのスポーツも伝統のある競技団体ばっかりだし、脈々と受け継がれた歴史もあるし。指導方法だって、昨日今日、できたものじゃないんでね。その時代に沿った指導法っていうのが、新たに生まれたり育ったりしてきたと思うんですね。だから一概に、ああだこうだって言うことはできないんですけども。

ただ、自分が若い頃と今とでは、スポーツに向かう姿勢とか、指導法とか、トレーニングに関しては、だいぶ変わりましたね。以前の連載の中でもお話ししましたが、昔は各競技団体でも、ウエート・トレーニングはしちゃいけないという時代でしたからね。しかし最近は、スポーツ選手だけに限らず一般の人まで筋トレをするようになってきた。特に高齢者の方にも取り入れられるようになってきた。ですから、そういう意味では随分、改善して進歩したと思いますね。

それと、どの競技団体も、選手がスタートする年齢が若くなりましたね。種目によっては、卓球だとか体操だとか、もう5歳、6歳頃からやってるものもありますし。野球もそうですよね。われわれの若い頃は、高校に入って部活でスポーツを始めたとかというのがメインだったですけど、今はほとんど小学生ぐらいから始まっていますね。そういう意味での技術とかレベルの高さっていうものは昔とはだいぶ違ってきてますよね。

昔はプロとアマチュアの差がものすごくあったんですけど、今はもう高校野球からプロに入っても、すぐその年から活躍できるようなレベルまで上がってきている。それは、かなりの進歩だと思いますよ。

昔は、あんまり子どもの頃から筋力を付けると、「身長が伸びなくなる」とか「体に悪い」とかって言われたんですけど、今はむしろ若いときから始めたほうが順応性が高まるとか言われています。そういうことで若い頃から始めてますよね。ゴルフもテニスも、そうです。みんな、小さいときからやってる連中が、今、活躍してますね。そういう英才教育みたいなものが、日本では特にここ最近、増えてきました。

ちょっと肥満気味の子供のためにトレーニング指導をすることもあるんです。今、学校で身体検査のとき、肥満だと、体重を落とすようにという指示が親に対してあるらしいんですよ。ときどきですけど、依頼を受けて、そういう指導もしますけどもね。ただ、運動だけじゃなくて、そういうことに関しては親の協力もないとできないので。食事のことなんかも絡んできますから。

ですからトレーニングは、本当に小学生ぐらいからもやっても構いません。そういう運動することによって、成長ホルモンが出て、体の成長を促す効果がありますから。

本格的なアスリートを目指す子どもの指導っていうのは、トレーナーが一番よく知っているんですが。ある競技に偏ったトレーニングの仕方じゃなくて、体全身のバランスを整えるような動きも含めて、そういう指導をメインにしてますよね。

特定の競技種目をやる際に、そういうトレーニングを続けながら、それぞれ選んだ競技に入っていけばいいと思うんです。いずれにしても順応性の高い体をつくって、その競技に打ち込むっていうことが大切だと思いますね。部分のトレーニングじゃなくて全身のね。下半身、上半身を含めた、それから敏しょう性や柔軟性も含めた、そういったトレーニングの指導をしています。

足が速い子もいれば、遅い子もいる。体育の苦手な子もいるし、得意な子もいる。音楽が得意でも勉強が苦手な子だっているし、逆に勉強は得意でも図工だとか音楽が苦手な子もいる。でも、それぞれ自分の好きな得意なものあれば、それで十分だと思うんですね。学校に通ってて1科目でも得意なものがあると、続くんですよ。休まないんです。

だから、いじめはよくないかもしれないけども、でも、その子供の得意分野を伸ばす指導も学校の先生の仕事だと思うね。君は、こういう素晴らしいもの持ってんだから、これで頑張れよと。これで学校1位になれとかって、そういう褒め方だってできるわけでしょう? そういうふうに持ってってもらえればいいかなと思っているんですけどね。

長男・克弘氏(左)がエンドウジムのチーフ・トレーナーを務める。


Text=まつあみ靖 Photograph=吉田タカユキ


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